更田豊志・原子力規制委員長
更田豊志・原子力規制委員長

 ところが、これとは正反対に、10日には、自民党の「電力安定供給推進議連」(細田博之会長)が電力の安定供給などを理由に、停止中原発の緊急稼働を求める決議を行い、その中で、稼働の際の規制見直しに言及した。ロシアに対する制裁措置の影響で原油やLNGの価格が高騰していることを理由にしたものだが、そのために安全規制を緩めろと言っているのだ。

 これら二つの議論は全く矛盾しているが、同じ保守派の議員が主張しているのには呆れてしまう。

 一方、ロシアへのエネルギー依存で日本以上に苦しいドイツは、22年(今年)内の脱原発の方針堅持を表明した。ロシアによる原発攻撃のリスクも勘案してのことだ。さらに、ハベック経済・気候相は、再生可能エネルギーなどの開発を「米テスラばりのスピードで行う必要がある」と述べている。論理的一貫性のある方針だ。

 賢明なドイツ政府とバカの極みの自民党が率いる日本政府。その落差の大きさにため息が出てしまう。

週刊朝日  2022年4月1日号より

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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