ライター・永江朗氏の「ベスト・レコメンド」。今回は、『「日本」ってどんな国?』(本田由紀著、ちくまプリマー新書 1012円・税込み)を取り上げる。

*  *  *

 日本はもはや先進国ではない、という話をよく聞くが、いまいちピンとこない。昔と何も変わらないように感じる。だが、変わらないからこそ、先進国から脱落したのかもしれない。

 本田由紀『「日本」ってどんな国?』はさまざまな国際比較データで日本の現状を明らかにした本。「家族」「ジェンダー」「学校」「友だち」「経済・仕事」「政治・社会運動」「『日本』と『自分』」という七つのテーマで、世界の中の日本を見つめる。中高生を対象に書かれているが、大人こそぜひ読むべきだと思う。

 日本にいて自分の身のまわりだけ見ていると「あたりまえ」と思っていたことも、データで諸外国と比較するとあたりまえではないことがわかる。

 たとえば日本のジェンダーギャップが大きいこと、男女平等後進国であることはよく知られている。だがその根っこは、行政や企業の体質だけじゃない。「男らしさ/女らしさ」などをめぐる日本人の感覚や通念にあることが、さまざまなデータから見えてくる。女性議員や女性社長が増えるだけでは解決しないのだ。

 日本では高校受験があたりまえだが、先進国では入学試験のない国が多いというのもぼくは知らなかった。そして高校進学時に偏差値で輪切りにされることによる弊害は見逃せない。行政が教育にかけるお金も少ない。多くのデータから、日本は若者にとってひどく生きづらい社会なのだと感じる。

 外国は外国、日本には日本のルールがある、と居直ることもできる。たとえばアフガニスタンのタリバン政権のように。でも、それでは息苦しいまま。風通しのよい世の中に変えるのがぼくら大人の責務だ。

週刊朝日  2021年11月19日号