それは選手も同じで、同世代の森野将彦選手、荒木雅博選手とは、「監督にこう言われたけど、どういう意味だと思う?」と互いに話し合っていた。

 落合監督との日々は鈴木さんを変えていった。集団の中にいないと不安で、周りの記者と同じように動いていたが、

「集団を抜けて一人になった先に、不安や哀しみではない何かが待っている感覚を教えていただいた。だから38歳で会社を辞めたときも不安はなかったんです」

 異色のリーダー像を浮き彫りにする本書は、8万部のヒットとなった。

「しがらみのない生き方には憧れますが、落合さんも自分にしかできないと思っていたのでは。意図してやるものではなく、そういう生き方しかできなかったのだと思います」

(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2021年11月19日号