※写真はイメージです
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 在宅療養を支える家族側としては、看取る覚悟、つまり来たる死を受け入れる準備をしておくことも必要だ。具体的には、予測される体の変化、死にゆく過程を事前に知っておくこと。その変化から、数日以内、24時間以内、そして数時間以内の死をある程度予測できれば、慌てふためいてパニック状態になったり、救急車を呼んでしまうことも防げる。

「死に向かう一連のプロセスは、食事や水分の摂取量が減っていき、意識レベルが下がっていく。そのうち目をつぶってうとうとしていることが多くなり、いよいよ死が近づくと呼吸状態が変化し、眠るように息を引き取る。大枠として説明すれば、これが起こりうる体の変化です。残された時間が週単位から日数単位になったと予想されたら、医師か看護師が必要に応じて訪問するので、心配なことは何でも相談したらいい。変化を知った上で、死にゆく人に接していけば、家でもしっかりした看取りができます」(同)

 在宅療養の場合、臨終のときに、医師や看護師が同席していないことも多い。むしろ家族や大切な人たちだけで、周囲に気兼ねすることなくお別れをすることができる。

「過剰な延命措置をしない在宅ケアでの看取りでは、安らかに、奇麗な状態で亡くなっていく人が多い。私はどの時点で医師を呼ぶかは、家族の判断に任せています。ゆっくりお別れをした後で医師や看護師に連絡してもらえればいい」(同)

 在宅療養は、住み慣れた環境で、最期まで自由に過ごせるということが最大のメリットだろう。人生の最期をどう過ごし、何を大事にしたいか。考え始めるのは早いに越したことはない。(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2021年10月8日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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