※写真はイメージです
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 住み慣れた家で最期を迎える「在宅死」。コロナ禍で病院の面会が制限されて家族と会えないことから、興味を持っている人も少なくないだろう。在宅死を実現させるために本人と家族側が気を付けるべきこととは。

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前編/コロナ禍で「自宅で最期を迎えたい人」が増加 「在宅死」のための準備とは?】より続く

 自宅での最期をかなえたいと願うなら、家族や周囲の人にその意思をしっかりと伝えておくことも大事だ。盆暮れに家族や親戚が集まったときなど、「死ぬときは自宅がいい」という希望を伝えておく。その希望を家族が知らないままに意思疎通ができない状態になれば、良かれと思って入院させ、病院で死を迎えることも十分にあり得る。

 また、症状の悪化に心配した家族が救急車を呼んでしまい、家族の見守りが一番必要なときに、実質的には家族に見放された形で病院に戻されてしまうケースもよく見られるという。救急車で運ばれても、これまで一度も診察したことのない医師は、原則として死亡診断書を書くことができないため、警察の検視が必要となり、悲しみがさらに深まることになりかねない。さらに、「最期は自宅で」という本人の意思を知らない遠くの親戚がいきなり介入し、「こんな状態で家に置いておくなんて何事か」と、強引に入院を勧めてしまうケースもあるという。

 そんな悲劇を起こさないために、自分は最期をどこで迎えたいか、終末期に受けたい医療や受けたくない医療について判断力があるうちに意思表示しておく“最期の覚え書き”ことリビングウィルを残しておくと良い。

「中には遺言書に死に場所や延命措置に関する希望を書く人がいますが、遺言書は死んでからじゃないと効力を発揮しません。リビングウィルにも法的な効力はありませんが、意向をくむことはできる。文書化しなくてもいいから、家族やケアマネジャー、ヘルパーなど周囲の人に、折に触れて最期の希望を伝えておくといい。元気なときにはなかなかそうした話がしづらいものですが、希望を伝えておかないと理想は実現しづらい」(さくらいクリニック・桜井隆院長)

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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