(週刊朝日2021年10月1日号より)
(週刊朝日2021年10月1日号より)

 排泄トラブルは大きな声では言えない悩みだ。誰もがなる可能性があり、放っておけば悪化の一途だ。その改善法などを専門家に解説してもらった。

【便の形状や硬さを分類した便秘や下痢の指標はこちら】

*  *  *

(週刊朝日2021年10月1日号より)
(週刊朝日2021年10月1日号より)

 シニアには便漏れに悩む人も多い。都内に住む67歳の男性はため息交じりに話す。

「あるとき、下着の中が濡れている感じがして、あれっと思って下着を見たら、薄くですが便がついていたんです。次にいつ漏れるかわからず、外出時には常に替えのパンツを持ち歩いていますし、薄い生地や白いズボンははけなくなりました」

 男性が便漏れを初めて経験したのは60歳を過ぎたころ。「高齢者に差し掛かるとはいえ健康体だったので、漏らしたという事実がショックだった」という。

 実は便漏れはめずらしいことではなく、多くの人が悩んでいる。便失禁診療ガイドラインの作成委員長も務めた藤田医科大学病院国際医療センターの前田耕太郎教授はこう解説する。

「便漏れに悩んでいる患者は全国で500万人いると想定されています。特に40歳以上になると便失禁の頻度が有意に多くなります」

■固まった便の外側から便漏れ

 前田教授によれば、便失禁の一番の原因は加齢。肛門を締める括約筋が衰えることで、便漏れが起こる。一般的には60歳が一つの区切りではあるが、主に40代から便失禁リスクがある群に入る。統計的には女性に多いとされ、50代以上の女性の10人に1人以上が便失禁に悩んでいるという。

 便漏れには大きく分けて二つのタイプがある。一つは、知らないうちに便が漏れ出てしまう「漏出性便失禁」。前出の男性を含め、便失禁患者に多いのはこのタイプだという。たとえば、咳やくしゃみをしたときに便が漏れてしまう。これは肛門の内側にある内肛門括約筋が主に関係している。

「内肛門括約筋は自律神経に支配されている不随意筋で、無意識のうちに機能しています。咳やくしゃみをしたときに自覚しないうちに肛門を締めている。この機能が落ちることで知らないうちに便が漏れてしまいます」

著者プロフィールを見る
秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

秦正理の記事一覧はこちら
次のページ