──身辺雑記を読むと少しずつ心にたまって、元気になる気がします。
▼そうなってくれればうれしいんですけど、身辺雑記そのものはすごく難しいですね。エッセーを書くのにまるまる1日かかるんです。小説よりずっとずっと遅い。
▽外にも行かないし。
▼外に出たからといって、おもしろいことがあるとは限らへん。生き物を取り上げることが多いのは、好きな人が多いと思うからです。自分も子どものころ、『シートン動物記』や『ファーブル昆虫記』を読んでいたし、テレビの動物番組は欠かさず見ます。
──読者の方から「黒川家の動物たち」をテーマに取材してほしいとお手紙をいただきました。
▼今はちょうどムクドリが子育てしてます。台所の窓の脇にあるエアコンの穴に巣を作って、卵がかえって親鳥が一生懸命エサを運んでいます。
▽親が戻ってくるとチッチチッチ鳴くんです。エサちょうだい、って。
▼クモもこの家にはたくさんすんでます。
▽クモは好きやね。
▼好きではないけど、かわいいとこはある。ヤモリは台所の窓に、いつも2、3匹、はりついてます。うちの庭には池があるので、殺虫剤をまかないんです。だからハチもよく来ます。
▽ようあんな大きな巣を作るね、あんなちっこいハチが。すごいなあ。
▼大きいのはコガタスズメバチの巣。アシナガバチのは小さい。庭の水槽の上で女王バチが一生懸命、巣作りしているのを最初から見てました。女王バチが卵を産んで働きバチが育つと、巣を大きくしていくんです。
▽カエルもいろいろいました。モリアオガエルは小さくて色がきれい。
▼水を張った火鉢の上に卵塊をぶらさげておいたら、孵化(ふか)したオタマジャクシが火鉢に落ちました。
▽カーン、カラカラカラ、カーン、カラカラカラッて鳴くんです。
▼鳥は多いですね。スズメを見るのは楽しいし、キジバトもおもしろい。
▽毎日ごはんをやっていると、なんにもないのは気の毒かなと思います。「せっかく来たのに、食べるもんがなんもないじゃないか」と(笑)。