健康な女性でも検査をすると、10%前後にハイリスクタイプのHPVが見つかることがあるという報告があるくらい、HPVは身近なウイルスといえる。たとえHPVが存在していても、ほとんどの場合、免疫の働きで排除することができる。しかしなんらかの原因で排除が十分におこなわれず、HPV感染が継続的になると、子宮頸がんになる前段階の状態(前がん病変)とされる「子宮頸部上皮内腫瘍」(CIN。異形成と呼ばれることも)を起こすリスクが高くなる。

 CINは進行度によってCIN1(軽度)~3(高度)に分けられる。CIN1、2では積極的な治療をおこなわず、3~6カ月ごとの経過観察となる。免疫が働いて自然に治癒したり、進行せずにすむ場合も多いからだ。杏林大学病院産科婦人科診療科長の小林陽一医師は次のように話す。

「ハイリスクタイプのHPVに感染後、約10%は継続的に感染し、CINに進むと考えられています。CIN3を経て子宮頸がんになるケースは、さらにそこから数%程度でしょう」

 子宮頸がんの進行度によるステージは、大きくI~IV期に分類される。▼I期=がんが子宮内にとどまっている▼II期=がんが腟や子宮頸部の周辺組織に広がっているが、それほど広範囲でない▼III期=がんが子宮頸部の周辺組織に、II期よりも広範囲に広がっている▼IV期=膀胱や直腸、肺などに転移がある。

 さらにI期のなかでもIA期(肉眼では病変が確認できない)、IB期(肉眼で確認できる)などに、細かく分けられる。

 子宮頸がんは、CINの段階やIA期では自覚症状がない。IB期になっても症状がないこともある。そのため、多くは婦人科検診や、妊娠の検査で受診して見つかるケースもあるという。IB期で腫瘍が大きい場合やII期以上になると、不正出血や性交時の出血、おりものが増えるなどの症状が表れてくる。

 検診などでは子宮頸部をこすって細胞を採取し、細胞診をおこなう。そこでCINが疑われたら、コルポスコープ(腟拡大鏡)という特殊な拡大鏡を用いて細部を調べる。また、疑われる部位の組織を切り取って組織診で調べる。

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