林:そうですよね。

甲賀:あと、表面には見えない心の上でのいろんなやりとりとか、営業時間外のやりとりとかもあって初めて単価が成立するんです。たとえば土日も積極的にゴルフに行ったりとか、ランチをご一緒したりとか。

林:私も、「グレ」(銀座の高級クラブ)でママをやったことがあるんですよ。東日本大震災のボランティアで。何人かの女性と日替わりで。

甲賀:はい、存じ上げています。

林:あのとき、着物を着て支度をして、夕方に銀座を歩いてると黒服の男性に「ママ、おはようございます」とか言われて、うれしさがジワッとこみ上げてきたなあ。「こんな天職はない。一生やりたい」と思っちゃった(笑)。

甲賀:うふふふ。

林:20時からは本来のお客さんが来るから、私たちのボランティア営業は20時まで、お客さんからは1人2万円と決めて。それで1カ月で1600万円集まって、それを四つの被災地に分けたんです。

甲賀:すごいです。いま林さんが「ママをやりたい」と言ったら、たぶんどこのお店も手を挙げると思いますよ。どうですか、「みんなコロナ対策を頑張ってるんだよ」というアピールも兼ねて。ぜひやっていただきたいです。

林:やりたい! あの銀座の夢をもう一度(笑)。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

甲賀香織(こうが・かおり)/1980年、埼玉県生まれ。2002年、青山学院大学文学部卒業。ベースボール・マガジン社に入社後、翌年に出産。米の通販事業を立ち上げる。06年、ベンチャー・リンクに入社。カーブスジャパンに出向し、創業期のスーパーバイザーとして600店舗を支援。08年、水商売の現場経験のため銀座「ル・ジャルダン」に入店。10年、True Heartを設立。11年、「お水大学」を創設。18年、一般社団法人日本水商売協会を設立。3児の母で、現在第4子を妊娠中。趣味は運動と料理

週刊朝日  2021年4月23日号より抜粋

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