あれから28年。松本さんは視聴率、そしてテレビをどう思っているのだろう。

「僕はずーっと視聴率を否定してきました。世帯視聴率のことですけど、それでは本当に面白いものを求めている若い人たちがテレビを見なくなるよって。最近やっと別な数字も注目されるようになってきたけど、連載でもずっと書いていて。何年前から言ってるんだってことですよね」

 だからお笑いについては先を読む力があったということだし、「権威」でしょうね。そう言ってから、こう続けた。「もっと前にテレビは気づくべきやったけど、もう手遅れでしょうね。こうやってユーチューブにとられていってるわけですから」

 10年、15年前に「コア(13~49歳)視聴率」の大切さに気づいていればよかったけれど、もう手遅れでしょう、と言ったあと、こう付け加えた。「最近は、じいちゃんばあちゃんの見るものも必要やろって、そういう感覚も出てきてるんです。僕もそっちに入りかけてるんで。ダブルスタンダードというか、世帯とコア、両方の視点が必要なんじゃないかと思います」

矢部万紀子

>>【後編/松本人志「65歳で芸能活動をやめたい」 森喜朗前会長に自分を重ねる?】へ続く

週刊朝日  2021年3月5日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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