(質問)現在、皇位継承は男性に限られていますが、長い歴史の中では女性が天皇になった事例もありました。一方、ヨーロッパの王室では近年、性別に関係なく長子を優先して継承する動きが広がっています。皇室の歴史や伝統と、世界的に進むジェンダー平等や女性の活躍推進の動きについて、陛下はどのようにお考えでしょうか。

天皇陛下)ご質問において言及されたようなヨーロッパの王室などにおける状況はよく承知しています。しかし、昨年も申し上げたとおり、制度に関わる事項について、私から言及することは控えたいと思います。

(質問)この1年を振り返って印象に残った出来事についてお聞かせ下さい。間もなく東日本大震災から10年になります。陛下はこれまで皇后さまと被災地をたびたび訪問し、被災者に心を寄せてこられましたが、被災地の人々や復興への思いもあわせてお聞かせ下さい。

(天皇陛下)この1年は、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るいました。新年のビデオメッセージでも述べたとおり、私も雅子も、この感染症がなかなか収束しない状況を憂慮しております。

 また、この感染症の感染拡大の影響により、特に、多くの可能性を持つ若い人々が苦境に陥っていることや、女性や若者の自殺や家庭内暴力・児童虐待などが増加していることなども危惧しております。

 他方、この苦難に直面しての我が国の国民の忍耐力や強靱(きょうじん)さに感銘を受けるとともに、この1年でとても多くの「感謝」の気持ちを感じたことも印象に残ったこととして挙げられます。

 医療従事者の皆さんが、新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからというもの、自らの感染の脅威にさらされながらも、強い使命感を持って、最前線で、昼夜を問わず、患者さんの命を救うために尽力いただいていることに心から感謝いたします。

 また、保健所の方々など、患者を適切に医療現場につなぐべく、努力をしている方たちにも心からの感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 この1年、新型コロナウイルス感染症の様々な影響に苦しんでいる方々の思いや置かれている状況をより深く理解し、寄り添えればとの気持ちから、様々な分野の専門家や現場で対応に当たられている方々から、雅子と共にお話を伺ってきました。

 高齢者や障害者、あるいは生活困窮者や生活困窮世帯の子供たちなどの現状について理解を深めるとともに、たくさんの方が、社会的に弱い立場にいる人々を支え、その命と暮らしを守るために力を尽くしていることを大変ありがたく思いました。そのような方々が、自らも感染症による負担や苦労を強いられる中で、なおも大勢の他者のために尽くす姿に大変感心いたしました。

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眞子さま結婚問題への言及