春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「節分」。

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 今年の節分は2月2日だった。ん? そうか、いつもは3日だったな。今年の節分が2日である細かい事情を調べてみたのだ。なんか、たまーにズレるらしい。んー、よくわからん。1日くらいのラグは43歳にもなると気にせんよ。2月なら問題なし。節分さんもどうか気に病むことなく、2月2~4日だったら遠慮なく節を分けてもらいたい。

 でも実際鬼たちは驚いたろうな。「えーっ? 節分って3日だろ? 1日早いなんて聞いてないよーっ!?」てなもんだ。でも人間の遥か上をいくはずの鬼だから、そんなことは事前にリサーチ済みだったかもしれないけどね。「2日はあんまり出歩かないようにしましょう、ステイホーム」と鬼都知事が鬼都民に呼びかけただろう、鬼CMで。主に鬼MX TVで。

 ん? でもよく考えたら、あいつら節分が2月3日ってわかってるはずなのに、なんで毎年その日に豆ぶつけられて逃げてくのだろう。毎年毎年、性懲りもなく。それならスケジュール帳に赤丸しとけばいいじゃないか。スマホのアラーム設定しとけばいいじゃないか。鬼政府も不要不急の鬼活動自粛を促して、テレ鬼ワークを鬼徹底、鬼国民に抜かりない鬼補償をすればいいじゃないか。

 そもそも鬼。豆で撃退されるってどういうことだ? お前らは人並み外れて強いから『鬼』なんじゃないの? 『鬼滅の刃』見てみろよ。鬼って無茶苦茶強くて、首を落とされないと死なないんだよ。それなのに現実の(?)鬼たちは豆。「ヒイラギにイワシの頭を刺したやつが玄関に飾ってあるので中に入れませーん」ってどういうこと? 「『鬼滅』はフィクションですからね~」とか言いそうだな、鬼。マンガと一緒にしないでとか言うなよな、鬼。地獄絵図のなかじゃ亡者を頭からガリガリ齧ってるくせに。それなのにイワシの頭はNGって可愛いにもほどがあるだろ、鬼。

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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