七之助:袖萩は目が見えない役だから、なかなか長三郎にこうしてと言えません。僕をリードしてくれる部分が多々あるし、役に集中しなくてはいけないのに舞台上でしなくてはいけないことがたくさんある。7歳でお君ちゃんを演じるのは、ある意味、難関中の難関。でも、二人ともこの1カ月ですごく成長すると思います。

――昨年は新型コロナウイルスの影響で中村屋は3月の「桜姫東文章」に続き、毎年行っている全国巡業がすべて中止に。これまでにない苦境を経験したが、5月下旬に緊急事態宣言が解除されると、7月に歌舞伎のライブ配信を開催。浅草から中村屋にゆかりのある、復活にふさわしい「お祭り」を届けた。

勘九郎:オンラインで生配信をすることで、歌舞伎を見たことがなかった方をはじめ、大変多くの方々に見ていただけたのはとても良かったことでした。お客様がチャットにリアルタイムでコメントをたくさん書き込んでくださったんですが、それって普段は芝居を見ているときの心の中の声じゃないですか。皆様の心の声を見ることができたというのは勉強になりますし、うれしいという気持ちになれました。

七之助:僕は最初、オンラインで生配信をやる意味がよくわからなかったんです。どうなるのか不安でした。幕が開いてもお客様はいませんし、反応ももちろんない。でも、公演が終わって家に帰ってから、当日のチャットの声を送ってもらったんです。僕はSNSもしていないので、チャットというものを知らなかったんですが、全部に目を通しました。泣きましたね。やって良かったなと思いました。コロナという状況で配信という形態が増えてきたわけですが、実際にやってみて、生の舞台と配信と同時進行でやる時代に来ているのかという思いがありました。

――コロナの収束が見えない中、今年の中村屋はどう進むのか。

勘九郎:国の方針や都の方針に従っていかなければなりませんが、お客様に楽しんでいただくことをいろいろ計画しています。ただ、このような状況なので……。

七之助:目標は持たないようにしているんです。

勘九郎:今月は祖父の追善を勘太郎、長三郎とともに一所懸命勤めます。十七世勘三郎は人間性も芸の上でも素晴らしい役者。僕たちも両方をつかんでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(構成/ライター・坂口さゆり)

週刊朝日  2021年2月19日号