政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスの感染者が急増する中、感染を疑う人や自宅で療養する人たちと医療機関を結ぶ役割の保健所が機能不全を起こしている。スタッフが電話で症状などを聞き取って病院の発熱外来や検査ができる医療機関を案内するはずの受診(発熱)相談センター(以下、センター)でも、トラブルが続出。混沌状態の中、「自宅死」を防ぐにはどうすればいいのか──?

【写真】特殊清掃業者が目撃したコロナ禍の「孤独死」の実態 

前編/コロナで保健所崩壊 「土地勘なし」の委託業者でトラブルも】より続く

 国が頼りにならない中、私たちはどうやって自分たちの命を守ればいいのか。検査を受ける前に自宅で容体が急変し亡くなる事例も相次いで報告されており、「自宅死」は現実にあり得る恐怖となっている。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が語る。

「健康なうちに発熱時に受け入れてくれそうな病院を調べておきましょう。一番良いのは主治医や信頼できる医師を見つけておくこと。良い医者を見つける方法の一つは知人の紹介です。医師と患者という関係性でなく友人として付き合っていると、相手を人間として見ているのでいざという時に頼りになる。そのためにも、普段から医師と接点を持っておきましょう」

 命の危険を感じる時にはこうした医師に相談するか、いち早く救急車を呼ぶべきだという。また、埼玉県や大阪府、東京都墨田区など一部の自治体は発熱外来やPCR検査などができる医療機関を公式サイト上で公表しているので参考にしたい。

 感染への不安が消えないという人の場合、「民間のPCR検査を定期的に受けておくことも一つの手です」(上医師)。最近では1万円以内で受けられる民間のPCR検査所も増えてきた。ただし、すでに発熱などの症状があると検査を断られることがあるので要注意だ。

 浜松医科大の尾島俊之教授(公衆衛生学)はこう語る。

「受診相談センターや保健所に相談する前に、診療所等に相談するほうが合理的です」

 尾島教授が考える根拠はこうだ。1人あたりの労力の負担を考えると、日本の保健所の保健師の数は人口10万人あたりおよそ7人。コロナ禍の現在は応援を受けているが、10人程度。一方、医療機関のうち重症者を診る呼吸器内科医は人口10万人あたり5人、感染症内科医は0.4人だが、内科・小児科の医師が病院と診療所を合わせて10万人あたり100人いる。こうしたことを考えると、本来はセンターよりも医療機関に助けを求めたほうがすぐに対応できるはずだ。かかりつけ医がいない人も、まずは近所のクリニックで相談してもらうといい。

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