※写真はイメージです (GettyImages)
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夫・妻の年金、繰り下げでこう増える (週刊朝日2021年1月22日号より)
夫・妻の年金、繰り下げでこう増える (週刊朝日2021年1月22日号より)
夫婦の年金戦略の考え方 (週刊朝日2021年1月22日号より)
夫婦の年金戦略の考え方 (週刊朝日2021年1月22日号より)

 人生100年時代。長寿化は喜ばしいが、途中でお金が足りなくなってしまっては大変だ。かと言って、年をとってくれば「今から貯金」はもう手遅れ。そこで検討したいのが年金額そのものを増やす「年金繰り下げ」の活用だ。夫婦であれこれ戦略を練れば、思わぬ「増額」が見えてくる──。

【表】夫・妻の年金、繰り下げでこう増える! パターン別詳細はこちら

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 関東地方に住むAさん(66)は、60歳を過ぎたころから夫婦の年金を増やしたいと思うようになった。夫の給料が60歳定年で激減したことにショックを受けてお金について勉強し始め、「制度」の存在を知ったからだ。

 制度とは「年金繰り下げ」。年金は「65歳受給開始」が基本だが、それを遅らせれば年金額を増やすことができる。

「夫の収入減を経験したので、老後は収入が減らない生活をしたいと思ったのです」

 Aさん夫婦は、役割分担で「調べるのは妻」が決まり。繰り下げ制度を調べては夫に報告していたが、65歳を前にしたある日、夫が「表にしよう」と言いだした。2人それぞれの年金のどの部分を繰り下げるのか、いくつかのパターンを考えてエクセルで一覧表を作り、金額を入れていった。

「要するに、夫婦の年金を“見える化”したのです。以前は数字をメモにしていましたが、見返すのに時間がかかる。その点、表は便利です。いつでも確認できるし、パターンごとの数字を比べることもできる。作って正解でした」

 Aさん夫婦はいま、ともに働きながら「繰り下げ待機」の生活を始めている──。

 人生100年時代を迎え、「長生きリスク」が指摘されている。長生きリスクとは、人は亡くなる時期が予想できないため、喜ばしい“誤算”ではあるものの、思った以上に長生きした場合にお金が足りなくなってしまう危険性のことを指す。

 長生きリスクを考えると、老後のお金は多ければ多いほど安心だ。しかし、若いうちならともかく、定年近くになると、子どもの教育が終わっていても増やすのには限界がある。ましてや60代で会社に再雇用される身となると、もはや生活するので手いっぱいだ。

 そこで老後の備えを万全にしたいのなら、年金繰り下げに注目したい。貯蓄ではなく、年金自体を増やす作戦だ。実際、繰り下げに成功した社会保険労務士でファイナンシャルプランナー(FP)の澤木明氏が言う。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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