──メディアの伝え方にも工夫が必要だとお考えですか。

 一度、ちゃんと冷静に整理して考えないとだめだよね。今は結論を出さないまま次に行っているから。ちゃんと分析すべきなのに、いついつに感染者数が4桁になりましたとか、何曜日に多いとか、どうしてもそうした数字に引っ張られてしまう。僕らも含めて全員がよくわからないまま伝えてしまってる。

──どこかに責任の所在を見つけて、批判しないと気が済まないという風潮があります。

 年始に各テレビ局で、初詣にこんなに人出がありますと画(え)を映すよね。多いなって一見、見えるんだけど、その神社がどんな対策をしているのかまでは見えないわけ。なのに、それを責める空気になって分断が起きるんです。裏の事情を知らせることなく、テレビは一瞬一瞬を切り取って印象づけてしまうんだけど、その点と点の間の部分をもう少し想像できるように、工夫したいなと思う。

──周囲と同じでなければいけないという同調圧力は、コロナでより一層高まったように感じます。

 嫌だなと思うよね。でも一方で、さっき言ったことと矛盾するけど、テレビがこれだけあおったことで、国民の間に恐怖心が広がって、その結果、日本がこの程度の感染者数で済んでいるという一面もあるんだと思う。だから一概にそれが悪いとも言えないんだよね。

──日本人は従順で慎重であると言われます。

 みんながマスクしているとか、この日本人の臆病さというのは大きいと思う。フランスではマスク着用が義務化されたのに誰もマスクせずに暴動が起きた。特措法について、罰則がなくて緊急事態宣言の効果があるのかってよく言われるけど、国民性も考えないといけない。法的な拘束力があってもフランスではそうなったわけで、日本は独自のやり方をするべき。

(構成/本誌・秦正理)

>>【後編/爆笑・太田光「日本には無責任な態度を取り続けていく賢さがある」】へ続く

週刊朝日  2021年1月22日号より抜粋

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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