菅総理は、国民に対する安心と将来の希望を与える言葉として、ワクチンの次にもう一つ挙げた。コロナを克服した証しとしてのオリンピック・パラリンピックの開催だ。英国発の感染力を増した変異ウイルスの拡大が恐れられる今もこの人の頭は五輪でいっぱいなのだ。

 安倍晋三前総理は、昨年2月から3月下旬の間、五輪延期決定に至る交渉に没頭し、コロナ対策を放置して感染拡大第1波を招いた。菅総理もやはり、五輪最優先で、コロナ対策は二の次のようだ。やみくもに五輪開催を強行し、世界に胸を張るのが夢なのだ。五輪を開催すれば、パラリンピック開催中あたりにも感染が爆発し、終了後は第4波で日本は壊滅状態。そんな光景が目に浮かぶ。

 菅氏に代わる総理候補が見当たらないというが、だからと言って、このまま、わかり切った大災害へと突き進むのは愚かすぎる。

 とにかく、菅総理をクビにする。そして、五輪を中止してコロナ対策に専念できる人なら誰でもいいから総理になってもらうべきだ。「緊急事態宣言」は、日本政治の中枢に対してこそ必要だ

週刊朝日  2021年1月15日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など

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古賀茂明

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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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