古賀茂明氏
古賀茂明氏
菅首相(左)と麻生財務相
菅首相(左)と麻生財務相

 2021年は大変な年になりそうだ。

【写真】危機感がないのが表れている?菅首相と麻生財務相

 もちろん、一番気になるのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。いつ収束するかという先の話よりも前に、正月休みにあちこちで医療崩壊が起きている可能性が高い。これまで聞きなれなかった言葉「トリアージ」が最もよく耳にする言葉となり、全国で多くの命が選別される地獄絵が繰り広げられることになるだろう。

 菅義偉総理は、あるテレビ番組で、国民への「自分の言葉を」と問われて、真っ先に述べたのが、「ワクチン接種が広まれば見通しが立ってくる」という話だった。しかし、ワクチンが全国民に行き渡るには今秋まででも無理で、かなり先までかかるということは菅総理も熟知しているはずだ。目前の危機に対する国民の不安を収めるために、そんな先の話をしていることが、この人の想像力のなさ、そして危機感のなさを表している。

 こんな総理の下では、どう転んでも当分は、安心して旅行や外食はできないのは確実だから、その間、経済はさらに落ち込み、生活苦に陥る人も増える。自殺する人も増えるだろう。ただし、それは、移動や外食の自粛で経済が落ち込むからだという政府の説明に頷いてはいけない。本当の理由は、困っている人を政府が助けないことにある。自助、共助などとまどろっこしいことを言わず、さっさと手を差し伸べればよい。

 ところが、驚いたのは、菅氏の経済ブレーンである某内閣官房参与が、テレビで語った言葉だ。貧しい人に手を差し伸べたいのだが、IT化の遅れで所得を把握することができないのが心苦しいと言ったうえで、「これは将来の課題として解決する」という。さらに、困った人への相談窓口があるが、役所の縦割りが問題となっているとしたうえで、「デジタル庁を作って各省庁のサイトを一元化する」と答えた。今日、明日、生きるか死ぬかと苦しんでいる人たちに、将来の課題として解決とか、半年以上先にデジタル庁ができるので「乞うご期待」という寝ぼけた答え。菅総理にこんなアドバイスをしているのかと思うと絶望的な気持ちになる。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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