

指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第48回は「東京アクアティクスセンター」について。
【写真】競泳の日本選手権が開かれた東京アクアティクスセンター
* * *
コロナ禍で延期になっていた競泳の日本選手権が12月3~6日、8カ月遅れで開かれました。選手がしっかり準備をして挑んでくれた結果については、来週お伝えしたいと思います。
今回は東京五輪の競泳会場になる東京アクアティクスセンター(東京都江東区辰巳)のこけら落としでした。屋内50メートルのプールはプールサイドも広く、収容人数1万5千人の観客席も五輪を開催するのにふさわしい国際的なサイズです。大会前日の練習日に初めて施設に入ったとき、コーチ仲間と「これはすごいなあ」と言い合って、テンションが上がりました。
これまで日本選手権の主会場だった東京辰巳国際水泳場は1993年の完成以来、波が立ちにくく好記録が出やすい高速プールと言われてきました。日本選手では2008年の北島康介、17年の渡辺一平と男子200メートル平泳ぎで二つの世界新記録が誕生しました。東京アクアティクスセンターも泳ぎやすいプールです。これから日本の水泳はここを中心に動いていきます。
00年シドニー五輪から競泳日本代表のコーチとして参加してきて、世界各地の立派なプールを見てきました。強く印象に残っているのはシドニーです。スタンドの裏側に五輪を振り返るコーナーがあります。選手のウェアや表彰台が展示され、当時の映像が流れています。プールの入り口のところには五輪で活躍した豪州の名選手の手形が並び、過去の五輪を振り返るモニュメントも設置されています。昨年も訪れる機会があり、20年近く前の五輪にタイムスリップしたようでした。
大きなスポーツ施設は維持費の問題が議論されます。シドニーの会場はサブプールの脇にジェットバスや滑り台があって、五輪後の利用を考えて設計されていました。昨年訪れたときはフィットネスジムが朝から営業していて、一般の人たちが気軽に利用できるようになっています。