一見“元気な爺”でも…作家・黒川博行がテニスで走りまわるワケ (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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一見“元気な爺”でも…作家・黒川博行がテニスで走りまわるワケ

連載「出たとこ勝負」

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黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行・作家 (c)朝日新聞社

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※写真はイメージです

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 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、自身の健康について。

*  *  *
 よめはんがダイニングボードのいちばん上の棚からポン酢を出してくれといった。わたしは扉を開け、手をいっぱいに伸ばしてポン酢をとろうとしたが、木の盆が落ちてきて頭を直撃した。

「あいた、たた……」

 そのとたん、よめはんはキャハハと笑った。

「ちょっと待て。ここは笑う場面か」「だって、おかしいもん」「それはありがとう」「ピヨコかて笑うやんか。わたしがマキに耳を噛(か)まれて泣いてたら」

 確かに、それはある。よめはんがアシナガバチに刺されたときも、犬の糞(ふん)を踏んだときも、わたしは笑った。わが夫婦は相手が難儀したときに笑う癖(へき)がある──。

 サラダにポン酢をかけて昼飯を食い、かかりつけの病院へ行った。わたしは二種の降圧剤と逆流性食道炎、痛風、高脂血症、前立腺肥大を抑える薬を毎日、服(の)んでいる。

 診察室に入り、前回の血液検査の結果を聞いた。尿酸値が“7”を超えていると主治医がいう。

「ちょっと危ないですかね」「発作は出ないと思いますが、水を飲みましょう」

 処方箋(せん)をもらい、調剤薬局に寄って帰った。冷蔵庫からペットボトルの茶を出して飲む。一日二リッターが目標だ。

 医者に聞くと、わたしの齢で常時六種類の薬を服んでいるのは多いほうらしい。これで血糖値まで高くなると立派な病人になってしまう。糖質を控え、せっせとテニスをしているのは糖尿病が怖いからだ。

 専業作家になった四十代のはじめ、ダイエットもしないのに見る見る痩せたことがあった。いつも動悸(どうき)がして、夜、眠れない。暑くもないのに汗をかく。症状をよめはんにいうと、バセドー病かも、といわれた。当時はネットがないから『家庭の医学』で調べるとすべてがあてはまった。心拍数と血圧の上昇、不整脈、異常発汗、震え、不安、神経過敏、睡眠障害、体重減少など、甲状腺機能亢進(こうしん)によって新陳代謝が過剰になるのだった。心拍数を測ってみると、夜眠る前でも百を超えていたから、一日中、走っているようなものだろう。体重が減るはずだ。わたしの母親も五十代のころ、ガンで甲状腺をとったから遺伝性があるのかもしれない。


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