地方の落語会の打ち上げでハブ粉をもらった。『原材料ハブ』とだけ書いてある。「これ飲んで寝れば二日酔いなんて絶対ないですから!」。とにかく凄い自信だ。「ホントにどんなに飲んでも大丈夫?」「はい!!」。じゃあ、としこたま飲んでベロベロになる。ハブ粉があれば無問題! だいたい毎回酔っ払い過ぎて、ハブ粉が飲めない。翌朝口の周りは粉だらけ。めちゃくちゃ二日酔いだ。嘘つき。

 戦後、噺家はよくヒロポンをやってたらしい。違法になってからもコソコソやってたので、とうとう使用していた噺家一同に警察への出頭命令。偉い人が警察に行くのを嫌がって、万年前座のお爺さんを代表として送り出したという。「私、一人でやってます」と言い張るお爺さんに警察も苦笑い。何日かブタ箱にいて無事帰還。「エライ! 一生面倒みてやる!」とお偉いさんは大喜び。お爺さん前座は何不自由なく暮らしましたとさ。

 東海大とは大違いの、独りだけに罪をおっ被せる無責任な落語家最高。クスリ、ダメ。ゼッタイ。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2020年11月13日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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