脳研究者・池谷裕二さんの本誌連載「パテカトルの万脳薬」をまとめた3冊目の単行本『脳はすこぶる快楽主義』(朝日新聞出版)が10月7日に発売された。刊行を記念して、人気占い師のしいたけ.さんとの対談が実現。二人が語る“運のつかみ方”とは?
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池谷:しいたけ.さんはたくさん連載を持っていらっしゃいますけど、一つひとつの文章が長いですよね。書くことが出てこないスランプはないんですか?
しいたけ.:不思議とないし、楽しいんですよね。占いをして書いているときというのは、いわゆる別人格になっている感じです。ウェブの「VOGUE GIRL」で星座占いの連載をして、「anan」でカラー占いなどをしているんですけど、星座なら12星座、カラーなら18色のカラーで見ていきます。対12、対18で話しかけなければいけないので、それは自分でもよくやっているなとは思います(笑)。
池谷:僕も科学が好きなので、論文を書くことのスランプというのはないんです。ただ、科学っていつでも大発見があるわけじゃない。今年は発見があまりなかったなという年もあるし、おもしろい発見が連発することもある。そういう波はあるんですが、発見がなくても、運が悪かったなというところに流せる感じです。
しいたけ.:科学における仮説を追究していく中で、思ったような結果が出ないと、やり方を変えてわき道にそれる実験をすることはあるんですか?
池谷:たくさんあります。自分が立てた仮説そのものがダメなことは多いのですが、こう間違えていたなら、次はこう考えたらどうかと方向を変えてみることで、大きな発見へのルートが急に開けることもあります。
しいたけ.:へえ~!
池谷:科学には、仮説を立てて検証していく方法と、何が起こるかわからないからやってみようという方法があるんです。たとえば、ガリレオ・ガリレイって月のクレーター、太陽の黒点、土星の輪などを発見しているんですが、仮説検証で発見したとは到底思えない。遠眼鏡を作って、「月だ! 太陽だ! 土星だ!」っておもしろそうだから見てみたんだと思うんです。
しいたけ.:なるほど。