池谷:興味本位の戦略は、ときに科学を大きく進めるんです。だいたいは失敗しますけど、勘のいい人はうまくいく。私はどっちかというと、勘を重視したいタイプです。世界初の測定器を作って何かを観察すれば、新しい何かが見えるんじゃないの?と信じて、やってきているタイプなんです。

しいたけ.:先ほど、発見がないときは運が悪かったで流せるとおっしゃっていたんですけど、運のつかみ方ってあると思うんです。オーディション番組の「Nizi Project(虹プロ)」を見ていたら、オーディションに合格する人、プロデューサーに認められる人って大きな特徴が三つほどあったんです。一つ目は、インタビューしたときの反応がワンテンポずれている子。

池谷:テンポですか? 内容ではなくて?

しいたけ.:両方かな。ダンスと歌はものすごくうまいのに、インタビューではいわゆる「天然ちゃん」という感じ。ダンスと歌以外に、無駄な緊張感を持ち込んでいないんです。二つ目は、自分の考えをしゃべろうとしている子。質問って、模範解答みたいなものがあるじゃないですか。

池谷:ありますね。聞くほうもそれを想定している。

しいたけ.:合格した子は、つたなくて幼い言葉かもしれないけど、等身大で答えていて、それが胸に響いたんですよね。三つ目は、人の顔色をうかがわない子。プロデューサーは韓国人のJ・Y・Parkさんという方で、常に「自分らしさを出せ、楽しめ」ということを言っていました。その枠からはみ出した人と、なかなかはみ出せない人とがいて、ダンスも歌もうまいのに、はみ出せなかった人は最終的に選ばれませんでした。

池谷:それはおもしろい。合格しなかった子は「減点法」タイプなんだと思います。ここでミスったからマイナス5点というように自分を評価するタイプ。合格した人はおそらく「加点法」タイプで、自分が好きなようにやってみて、うまくいけば点数がもらえると思っている。減点法タイプの人は、いい子でいようとしてビクビクしてしまう。逆に加点法タイプは、ワイルドで外れているかもしれないですけど、魅力的に見えますよね。

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