帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
なかなか難しい「信頼の三角形」 ※写真はイメージ (GettyImages)
なかなか難しい「信頼の三角形」 ※写真はイメージ (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「治療法について」。

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【代替療法】ポイント
(1)絶対に効かないという治療法はない
(2)絶対に効くという治療法もない
(3)治療効果に必要不可欠な「信頼の三角形」

「絶対に効かないという治療法はない。絶対に効くという治療法もない」

 この言葉は統合医学の世界的権威でオピニオンリーダーであるアンドルー・ワイル博士が、著書『人はなぜ治るのか』(上野圭一訳、日本教文社)のなかで述べている見解です。

「治療法はどれも、ときによって相当程度の数の患者を治している。いかに珍妙で、わけのわからない、科学的事実に反するものであれ、ある形式をもつ治療法はすべて、何がしかの治癒をもたらすのである」(同書)

 私も確かにその通りだと実感しています。私の病院には、西洋医学から見放されたがん患者さんがたくさんいらっしゃいます。そういう患者さんが頼るのは、東洋医学を含めた代替療法(西洋医学以外の療法)です。私に会う前にすでに自分で代替療法を見つけている方もいらっしゃいます。そのときは患者さんの意向を尊重して、当分はその療法を続けることが多いのです。なかには、どう見てもこんなものが効くはずがないと思われるものもあります。ところが、1人、2人はかならず効く人がいるのです。

 ワイル博士はこうも言います。「治療法はどれも、治効理論がいかに論理的・科学的にみえようと、いかに入念に施療しようと、特定の病気や特定の患者にとっていかに望ましい処置を施そうと、ときによって治療に失敗している」(同書)

 これも、まったくその通りです。ある治療法で見事にがんから生還した患者さんがいて、大いに意気込んで別の患者さんに同じ治療法を試しても、まったくの空振りになることが珍しくないのです。治療の過程というものは、多くの要因が関与するうえ、きわめて個性的なものなのでしょう。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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