入れ歯は、金属のバネを残っている歯に引っかけたり(部分入れ歯)、プラスチックの樹脂製の「床」を歯肉に密着させたりする(総入れ歯)ことで人工歯を固定する。自分で取り外しできるため、清掃しやすいというメリットがある。だが、出し入れするときに残っている歯に負担がかかるのと、天然歯と比べるとかむ力が弱く、唾液が出にくい。

 ブリッジは、両隣の歯を支柱として人工歯を固定する。しっかりかむことはできるが、両隣の健康な歯を大きく削らなければ装着できず、残っている歯に負担がかかる。

 一方、インプラントは、手術によりあごの骨に人工歯根(インプラント)を埋め込み、それを土台として上部に人工歯を装着する。人工歯根に使用されるチタンは、「からだと親和性が高い」という特徴がある。チタンを骨に埋め込んでも、異物だとからだ(骨)は認識せず、骨と結合するのだ。このため、安定した土台となって、人工歯がぐらつくことなく、しっかりとかめるようになる。

「インプラントは、第二の永久歯と呼ばれるほど、かむ力が回復する方法です」(宮崎歯科医師)

 しっかりかめる、残った歯に負担が少ない、見た目が自然で美しい、といったことが利点だ。

 一方でデメリットは、「手術が必須」なことと、「大きな費用負担がある」ことがあげられる。

 日本口腔インプラント学会広報担当理事の加来敏男歯科医師はこう話す。

「あごの骨にインプラントを埋め込むには、歯肉を切開してドリルで骨に穴を開ける手術をおこないます。こうした手術に求められる歯科医師の高度な技術や知識、設備などのために、あらゆる方面で通常の歯科治療よりもずっと費用がかかるのです」

 外科手術が必須のため、治療を受けられるかどうかは、全身の状態にも左右される。循環器系や呼吸器系の病気、糖尿病や骨粗しょう症などの持病がある人は注意が必要だ。

 過去にはインプラント手術に関する事故報道があったこともあるため、「インプラントは怖い」という印象がある人も少なくないだろう。

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