2月からの累計をみると、8月28日時点では東京都の1万1312人が最も多かった。大阪府の4194人、愛知県の2599人、北海道の2088人、兵庫県の1735人と続く。ほかに1千人を超えたのは神奈川、千葉、岐阜、福岡、沖縄などの9県だった。産業別では、製造業が7918人と最多で、宿泊業が7140人、飲食業が6912人、小売業が6257人だった。

 ただ、こうした数字は各都道府県の労働局やハローワークに相談があった事業所の報告に限られるため、あくまで“氷山の一角”とみられる。

 さらに「コロナ禍に便乗した解雇が増えつつある」と指摘するのは、日本初のオンライン型労働組合「みんなのユニオン」代表の、アトム法律事務所弁護士法人グループの岡野武志弁護士だ。

「これまで扱った100件のうちで実際には懲戒解雇が最も多かったが、今年に入ってからは整理解雇の割合が増え、そこにコロナが拍車をかけている。コロナ禍で売り上げが激減するなど整理解雇として認められるケースはあるが、売り上げが芳しくない中で気に食わない従業員をこのタイミングで解雇しようという便乗も目立つ」

 前述のAさんのケースについても、コロナ便乗型の可能性があるという。

「会社側があまり考えずに、とにかく解雇を優先させたのではないか。一般的に従業員を解雇するとなると、まず労使双方が話し合って、再教育したり、配置転換したりとステップを踏まなければならない。これを面倒くさいからと解雇したケースだと思う」(岡野弁護士)

 Aさんは会社側に解雇無効を申し立てる方針だが、実際の流れはどうなっていくのだろうか。

「解雇をめぐっては、弁護士を通じた交渉によってほぼ解決する。ただ、全体の2割くらいは会社の言い分が妥当だとして、解雇が有効とされるケースがある。また、法律上は間違いなく解雇無効と裁判所で指摘されるようなケースであっても、それを経営者側が突っぱねる場合もあり、これは労働審判や民事裁判で係争する」(同)

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