最近、よく幻覚を見るんです。幻覚というより、半分夢かな。最近も知り合いが虫を送ってくれて、食い跡がキレイに残っているタバコの葉っぱに2種類の虫がついていたんだけど、朝起きたらいくら捜しても見つからない。よく考えたら夢なんです。

小堀:普通の人がICUで見る幻覚は壁を虫が這っているといったのが多いんですが、ICUではお地蔵様を見て、普通の夢は虫で、というのが非常に興味深い(笑)。

養老:退院はしましたが、仕事をセーブする気は全然ないですね。だいたい本人に病気という感じがないのですから。今はよく「Zoom」でおしゃべりしています。10人ぐらいで、ただしゃべるだけですけど、メンバーにはラオスの人も2人入っている。といっても、ラオスに行って帰れなくなっている人ですけどね。

小堀:さては、虫関係ですね。

養老:そうです。そういうことをやっているから、むしろコロナ前より楽しいぐらいですよ。

小堀:養老先生は自粛生活を楽しんでいるのかもしれませんね。そもそも「養老ワールド」というのはコロナの影響なんて受けない世界ですものね。最近もいろいろ書かれていますね。

養老:文芸誌の「新潮」に「コロナの認識論」という文章を書きました。テレビを見ていて、新型コロナウイルスのニュース画面に、アナウンサーと並んでウイルスの写真が出ているでしょう? 電子顕微鏡を覗いていた身からすると、違和感を覚えるんです。

小堀:毎日のようにニュースで見る画像ですね。

養老:ウイルスをあの大きさにしたら、人間はほとんど地球サイズの大きさになる。それが並んでいるというのは、ちょっと乱暴な見え方ですよ。

小堀:面白い視点ですね。

養老:ほかに気になっているのは「日本はAI(人工知能)後進国だ」という言い方が気になっています。僕の頭の中では、これが戦前の歴史とかぶってくる。どういうことかというと、欧米の帝国主義が戦前にあってね、それを日本がただマネをした。AIでそれに近いことが起きるんじゃないか、と思えてしょうがないんです。

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