で、問題はその“適量”。

「それぞれの適量や許容範囲を知ることが大事。たとえ同じ量を飲んでも平気な人もいれば、体にダメージが加わる人もいます。そこを見極めることが大切」

 とはいえ酔っ払ってしまえば、許容範囲の満杯ポイントはわかりにくいと思うのだが……。何か「お知らせ」はあるのだろうか。

「一番わかりやすいのが、二日酔いですね。翌日に残るようなら、飲みすぎ。じゃあ、残らないからOKかというとそうでもない。肝臓疾患はほとんどは自覚症状がないですから」

 そこで浅部さんは、定期的に検査や人間ドックを受けて、数値や超音波検査で肝臓にダメージがないかをチェックするのが、新時代の酒飲みの最低限のたしなみだと強調する。ただ、健診ではひとつ注意が。

「健診前1週間など、禁酒するのはNG。数値が変わりますから、健診の意味がなくなってしまいます」

 また、おいしいお酒のためだけではなく、普通に健康のためにも、日常生活に「適度な運動」を取り入れることもお忘れなく。アルコールを飲みすぎると脂肪肝になりやすく、肥満の人は、そのリスクが2倍に跳ね上がる。運動はその意味でも有効だ。

 コロナ禍以降は、アルコールで気持ちを晴らそうとするネガティブな飲酒の存在も取り沙汰されている。アルコール摂取のためだけに飲むようになると、依存症のリスクが生まれるという。飲みすぎたと落ち込んで、また飲みすぎてしまったり、お酒が切れるとイライラするようなときも依存症の危険信号。アルコールは脳に直接作用する一種の化学物質。気持ちだけでコントロールできないときは、注意が必要だ。

 ちなみに、あまり節制しない酒飲みが言う「我慢しているほうがストレスがたまって体に悪い」というエクスキューズ。あれって?

「医学的なエビデンスはなくオススメできません。本人がそう思いたいだけ、ということが多いですね」

 やっぱりね。このほか、意外に知られていないのが寝酒の問題点。ぐっすり眠れると思い込んで習慣にしている人もいるが、実は就寝前の酒は睡眠の質を下げることがわかってきた。酒が長く飲める健康体のために、控えるのが得策だ。

 以上、お酒を飲み続けるためにはさまざまなルールがある。でも、どれかひとつだけならやってもいい、という、わがままな酒飲みがいたら?

「何より量に気をつけるということが第一ですね。無理と思って、諦めないでください。毎日20グラムのアルコールでは少なくても、例えば1週間単位で140グラムなど、総量規制で考えればいい。休肝日を挟めば、けっこうな量を楽しめますよ」

(ライター・福光恵)

週刊朝日  2020年7月3日号より抜粋