たいていのことは「継続は力なり」だが、飲酒となると話は別。大変な苦労の末、酒の継続を断ち切った人たちが成功者として脚光を浴びる一方で、声は小さいが、この男性のような「絶対やめたくない派」も、一定数はいるらしい。

 健康障害や若者の酒離れなどで、酒飲みをめぐる状況は年々悪化している。そしてここに追い打ちをかけたのが、コロナ禍だ。

 例えば、ファミレスチェーンの「サイゼリヤ」は4月にビール、ワインなどに合計2杯までなどの上限を設定し、酒類の販売制限を開始。その理由として「飲酒は量が増えるに従い気持ちを大きくし、大声やお客様同士の接近も誘発してしまう場合がある」。

 たしかに!

 大分県などが「新しい生活様式」を実践しながら、実験的におこなった飲み会も、酒飲みには衝撃的だった。グラスを接触させずに乾杯したり、飛沫を防ぐフェースシールドをつけたまま飲酒する飲み会って……。


 要は、新しい生活様式に、酒をなじませるのは至難の業。いやいやウィズコロナの人生100年時代にも、長く細く酒を楽しむ方法はきっとあるはず。「それでも飲みたい」読者を引きつけて大ヒットした葉石かおり著『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社刊)を監修した「酒好き医師」、肝臓専門医の浅部伸一医師に聞いてみた。

 まず監修本の反響から。

「長年酒を飲んできた中高年からの反響が大きかった。実践しているかどうかは別にして、勉強になったという声は多かったですね」

 ちなみに浅部さん54歳。「お酒そのものに強いこだわりはない」ものの、食事と一緒に楽しむことが多いため、その楽しみは「できたらやめたくない」と考えているとか。自身も、本の監修をしてから、あらためて気をつけるようになったという。

 そんな酒をやめたくない人が気をつけたいのは、まず酒の種類だ。飲みすぎると体に負担が大きいのは、アルコールを取りすぎてしまう度数の強いお酒。

「適量は人それぞれなので、絶対にウイスキーや焼酎がダメというわけではありません。ただ、短時間に強い酒をぐいぐい飲むと、アルコール摂取量が増えやすい。そういう意味では、あまり強くない酒のほうが、飲みすぎを防げることが多いですね」

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