境野医師はまた、今後の医療で変わるべきこととして、「感染症も診られる救急医療の構築」を挙げる。

 4月には、急患の搬送先がなかなか決まらない、救急搬送困難事案が1週間で1658件あったことが、消防庁で報告されている。

「救急が感染対策を行っていかないと、この先の救急医療は回らなくなります。脳卒中だろうが、自転車で転んだケガだろうが、感染している前提で対応する必要があります」

 日本感染症学会によると、感染症の専門医は1560人(6月12日現在)で、しかも大学病院など一部に集中している。「感染症の専門家がもっと必要」(山梨・50代・脳神経科)なのは、火を見るより明らかだ。

 今回の経験では、国民が「感染対策に気を配るようになった」(神奈川・50代・救急医療)。その効果もあったようで、2019~20年シーズンでインフルエンザにかかった人は、例年より大幅に減った。

 この先、新型コロナはなくならない。医療現場では、「新型コロナを今までの発熱疾患の一つとしてきちんと区別し、新型コロナだけにとらわれることなく全般を鑑みた診療を行う」(本・50代・一般内科)ことが、私たちは地道に感染対策を続けていくことが大切なのだろう。(本誌・山内リカ、秦正理)

週刊朝日  2020年7月3日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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