給与ファクタリング問題に詳しい黒木和彰弁護士が話す。

「診療報酬の場合、支払い期限は2カ月後ですから、例えば手数料が15%だとすれば年利換算すると90%にもなります。診療報酬は取りっぱぐれることがないので、暴利です」

 だが、現状では法律の網にかけるのは難しいという。

「診療報酬を譲渡担保にしてお金を貸すことは銀行も行っていますが、金利は安く3%未満程度です。クリニックは個人事業主だから労働基準法にも引っかからない。究極のグレーゾーンと言えますが、こういう業者を跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)させるとクリニックや病院が潰れます。こんな状況で新型コロナの第2波がきたらどうなるのか。早急な対策が必要です」

 福岡県で病院経営をしている院長によれば、4月の診療報酬は前年比で40%にも達しなかったという。緊急事態宣言後、定期的な受診、投薬を受けている生活習慣病の患者が、通院を自粛したことが大きい。

「患者さんに聞くと、『コロナに感染したくない』という声を何度も聞いた。うちはそれなりの規模の病院なので、万一、新型コロナの感染の疑いがある患者さんが来院した場合に備えて、玄関わきに発熱外来として小さな部屋を用意した。防護服やマスクなどを高騰する中、大量に購入しました。新型コロナ対応で300万円以上のお金を使いましたが、結果的に部屋は数回使用しただけです。その上、『あそこはコロナ患者が来る』という風評被害まで受けています」

 コロナの影響で苦境が続き、病院の収入が大幅に減少していることは、数字で示されている。一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会が合同で全国の病院に実施したアンケート調査(加盟する4332病院のうち1317病院が回答)では、今年4月の病院の収入は、昨年同月より全国平均で10.5%減った。新型コロナの患者が多かった東京都は特に減少幅が大きく、20.4%も落ち込んだ。

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