「3密」を防ぐため段ボール製の素材で区切り、カーテンでプライベート空間をつくった模擬避難所を見学する研修会の参加者=岩手県岩泉町 (c)朝日新聞社
「3密」を防ぐため段ボール製の素材で区切り、カーテンでプライベート空間をつくった模擬避難所を見学する研修会の参加者=岩手県岩泉町 (c)朝日新聞社
新型コロナ対策としての備品 (週刊朝日2020年6月19日号より)
新型コロナ対策としての備品 (週刊朝日2020年6月19日号より)

 コロナ禍で大災害が起きたら、感染が拡大し、感染症と自然災害の複合災害となる恐れがある。住民が一斉に集まる避難所では密閉、密集、密接の「3密」になりやすい。危機管理情報サービスを提供するスペクティ(東京都)によると、南海トラフ大地震が発生した場合、最大で60万人が避難所で新型コロナに感染する可能性があるという。

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 単純な感染拡大だけではない。被災地の病院では地震や津波などで負傷した患者を多く受け入れることが想定される。また、医師や看護師、医療機関自体が被害を受けたり、マスクや消毒液、防護服などの備品が確保できなかったりするかもしれない。患者の受け入れ能力が通常時より逼迫(ひっぱく)することが考えられる。

 こうした事態を防ぐため、自治体では3密を避ける対策が進み始めている。

 南海トラフ地震で最大震度7が想定されている豊橋市(愛知県)では地区の市民館など71カ所を第一避難所として、収容能力をあふれた場合に小学校など95カ所を第二避難所として使うとしていたが、方針を転換。3密を避けるために第一避難所と第二避難所を同時に開放するように改めた。間仕切りなどをより活用する対策も検討している。

 水害の多い福知山市(京都府)でも地域の集会施設を新たに避難所とするなど対策を進めている。具合の悪い人を隔離するためのテントも増やす予定だ。また、流通大手のイオンなどと協定を結び、駐車場に車で避難できるようにしており、改めてコロナ対応として活用する。

 他の自治体でもマスクや消毒液の備蓄を増やすなどの取り組みをしているところが多い。自分の住む自治体がどんな対策をしているか、事前に確認しておこう。

 しかし、その取り組みもまだ始まったばかりだ。これまでもインフルエンザやノロウイルスなどの感染症対策は想定されてきたが、「正直、そこまで意識していなかった」(ある自治体の危機管理担当者)というのが現状。自治体からは「品薄で必要な備品がすぐに集まらない」という声も上がる。スペクティの村上建治郎代表取締役はこう話す。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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