今年に入ってからは菅義偉官房長官との溝も深まっていると言われ、コロナの影響もあるとはいえ夜の会合はゼロ。孤独感を漂わせながら「ふぅー」とため息をつく姿もよく見られるという証言もある。政治ジャーナリストの角谷浩一氏がこう語る。

「コロナが収束しないうちの解散は不可能で、当面は下がり続ける支持率を打開する手がない。来年10月の衆院任期満了まで追い込まれての総選挙になれば苦戦は必至で、自民党としては早期にトップを入れ替える動きが出てくるのでは。国会が終わる6月の退陣もあり得る」

 では、「ポスト安倍」は誰なのか。一時、筆頭候補とみられていたのは岸田文雄自民党政調会長だが、同氏が旗振り役だった経済対策の「条件付き30万円給付」が土壇場で「一律10万円給付」に覆されたことで、失点がついてしまった。

「公明党の山口那津男代表と二階俊博自民党幹事長が安倍首相に“直訴”したことで予算が組み替わったわけで、自民党の政策決定プロセスが完全に無視された。“蚊帳の外”にされた岸田さんは力不足が露呈してしまった」(自民党議員)

 他の候補者たちも存在感が薄い。内閣改造の目玉として昨年9月に戦後3番目に若い38歳で初入閣した小泉進次郎環境相は、自身の「ウェブ飲み」への挑戦をアピールするなど、持ち味の発信力が空回り気味。4月29日の参院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫議員から「ワーケーションって何ですか?」などと、補正予算案にコロナ収束後を想定した予算が組み込まれていることを指摘されたが、「ワークとバケーションを合わせた言葉で、我々が作った言葉でもありません」と、噛み合わない“官僚答弁”に終始。答弁能力のなさが露呈してしまった。

 一方、世論調査で次期首相候補トップとなることも多い石破茂元自民党幹事長も、この間、あまり積極的な動きは見えてこない。

「政府や党の要職に就いていない現在の立場なら、もう少し積極的に動いて存在感を示せるはずなのに、発信が少ない」(角谷氏)

次のページ