鳥取県で行われたドライブスルー方式の検体採取の手順確認の様子(C)朝日新聞社
鳥取県で行われたドライブスルー方式の検体採取の手順確認の様子(C)朝日新聞社

 新型コロナウイルスに感染した疑いがあっても、PCR検査を受けられない事例が、各地で相次いでいる。

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 そんな中、東京都墨田区は、新型コロナウイルスの検査をより多くの人が受けられるための検査所を設置。ウイルスが外部に漏れないように気圧を低くした「陰圧テント」で、1人5分程度で検体を採取できる。1日当たり最大50人分の検査が可能だという。
 
 こうした自治体独自の取り組みは出始めているものの、コロナ対策は地域によって温度差が生じている。

 他の区でクリニックを経営する内科医は、コロナ感染が疑われる患者を何人も保健所に紹介してきたが、いっこうにPCR検査を受けられなかった。内科医は困惑しながら、こう語る。

「感染を拡大させる恐れがあるのでPCR検査を強く求めると、保健所から自分のクリニックで検体を採取すれば、PCR検査に回してやると言われました。防護服を貸すとも言われましたが、他の患者さんに感染させてしまう恐れがあります。小さなクリニックではとても対応できません」

 検体の採取は、綿棒で口や鼻から咽頭の拭い液を取って行う。この時、患者が咳やくしゃみをすれば飛沫を正面から受けることになる。それを防ぐために医師や看護師は、防護服にサージカルマスク、目の防護具、手袋を装着して作業しなければならない。医療機関で検体採取をする場合、患者1人ごとに防護服を着替えるなど厳重な感染予防策が必要だ。前出の内科医が続ける。

「知人の開業医の先生が苦慮しながら検体採取を行ったところ、クリニック内で感染者を出してしまったそうです。私たち開業医は、コロナ感染の可能性がある患者さんは他の患者さんと一緒にならないように別の診察室で診るようにしたり、診察時間をずらしたりするなど対策を取っています。保健所に検体採取の場所を提供してほしいとも伝えましたが、それはできないと拒否されました」

 一般のクリニックには陰圧室のような設備はない。検体採取を押し付けて、感染者を拡大させてしまっては本末転倒ではないか。医師や看護師が感染すれば、クリニック自体が一定期間閉鎖に追い込まれかねない。

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保健所職員「医療体制の破綻が始まってきている」