「記述式が見送られたことで、『センター試験に戻る』と勘違いしたり安堵したりしている人がいるかもしれませんが、違います。共通テストに変わります」

 出題傾向や評価する内容、テストで受験生の何を測るのかという試験の目的については、センター試験の時代とはかなり変わってくるという。

 ここで一連の大学入試改革の流れを振り返ろう。共通テストは、13年10月、政府の教育再生実行会議が大学入試センター試験に代わる新テストの導入を安倍晋三首相に提言して、検討が始まった。17年、文部科学省が、共通テストの実施方針を公表。その目玉だったのが、英語の民間試験と、国語と数学での記述式問題の導入だった。

 ところが昨年11月に英語の民間試験活用が延期に、12月には国語と数学の記述式導入も見送られた。英語の民間試験は都市部のほうが圧倒的に受験機会が多く、試験を何度も受けたほうが点数が上がるので、教育格差を助長するとの声が強く、記述式の採点は公平性が保てるか疑問視されていた。

 ただし、押さえておきたいのは、そもそも記述式問題の導入は、現行の学習指導要領が高校に育成を求めている「思考力」「判断力」「表現力」を評価するための手段の一つだったということ。昨年6月に発表した「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」の基本的な考え方の中でもこの三つの力について触れており、出題形式の変更があったとしてもその力を意識して問題を作成することに変わりはないのだ。

 おぼろげだった共通テストの姿が具体的なかたちで示されたのが17、18年に実施された「試行調査(プレテスト)」。試行調査と今回のセンター試験には共通した傾向がみられた。

 まず、注目したいのは、文章や図表など複数の資料を読んで、答えを導き出すような出題パターンだ。河合塾教育教材開発部長の稲木博さんは、試行調査の分析などから共通テストでは二つの力が問われると話す。

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