7月のダイハツ・ヨネックスオープンで雄たけびを上げる桃田賢斗 (c)朝日新聞社
7月のダイハツ・ヨネックスオープンで雄たけびを上げる桃田賢斗 (c)朝日新聞社
違法賭博問題で謝罪する桃田賢斗(右)=2016年4月 (c)朝日新聞社
違法賭博問題で謝罪する桃田賢斗(右)=2016年4月 (c)朝日新聞社

 2020年東京五輪で活躍が期待される選手を紹介する連載「2020の肖像」。第12回は、バドミントン界で「最も金メダルに近い」と言われる、男子シングルスの桃田賢斗(25)。自らが犯した過ちと向き合い、強くなって戻ってきた。3年前、リオデジャネイロ五輪の出場権を失った男は今、「世界一」の称号を手に2020年東京五輪に臨む。朝日新聞社スポーツ部・照屋健氏が、復活までの足跡を辿る。

【写真】違法賭博問題で謝罪する桃田賢斗

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 表情に、自信がみなぎっていた。12月1日、全日本総合選手権で2連覇し、記者会見で報道陣から「昨年の優勝と比べてどうか」と聞かれたときのことだ。

「昨年は世界ランキング1位になっても、気持ちがふわふわしていた。こんな1位でいいのかなっていう弱い部分もあった。今年はしっかり自信を持って試合に挑むことができた。その自信が相手の重圧にもなったと思う」

 今年に入ってから国際大会で10度優勝、68試合で62勝6敗(12月6日時点)と圧倒的な強さを誇る。日本の男子シングルスで初めて全英オープンを制し、世界選手権では2連覇を達成。ビッグタイトルを総なめにした。18年9月に初めて世界ランキング1位となってから、一度もその座を譲らずに守り続けている。

 12月11日、世界バドミントン連盟が五輪出場の条件として定める来年4月末時点での世界ランキング16位以内(かつ日本選手上位2人以内)が確定し、五輪出場が確実となった。

「今は、目の前にある試合に、しっかりと向き合えている。純粋にバドミントンを楽しみたい、試合に勝ちたいという思いで毎日を過ごしているから」

 リオ五輪を間近に控えた16年4月、違法賭博問題が発覚し、桃田の人生は大きく変わった。

 確実視されていた五輪への出場はなくなり、日本バドミントン協会からは無期限の出場停止処分を科された。多くの報道陣を前に、茶色だった髪を真っ黒に染めて謝罪会見をした。所属するNTT東日本から30日間の出勤停止処分も受けた桃田は、一人、香川県三豊市にある実家に戻った。

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