本誌が高木院長に取材したところ、次のように語ってくれた。

「2年前の限られた古いデータをもとに一律で評価しており、本来の病院の存在意義が全く考慮されていません。評価の対象も、がんや心疾患、脳卒中など9項目に限られています。それなのに、風評被害を招きかねない発表の仕方をしたことには納得がいきません」

 厚労省は、自治体が運営する公立病院と、日本赤十字社や社会福祉法人恩賜財団済生会、独立行政法人国立病院機構などが運営する公的病院の合計1652施設のうち、2017年度の診療データが集まった1455病院を分析した。

 公立・公的病院が担うべき診療や機能9項目について、手術などの実績が少ないところを「診療実績が特に少ない」と評価。近くにより診療実績が高い病院があったり、機能を代替できる病院があったりする場合「類似かつ近接」と評価した。この「診療実績が特に少ない」「類似かつ近接」のどちらかに当てはまると、再編の議論が必要だとしている。

 東京都済生会中央病院は、「類似かつ近接」に当てはまると評価された。これについて高木院長はこう説明する。

「当院は、東京都内の文京、台東、千代田、中央、港の5区からなる『区中央部医療圏』にあります。この地域は全国で最も多くの病院があることで知られています。すぐ近くには東京慈恵会医科大学附属病院や、国家公務員共済組合連合会虎の門病院といった日本を代表する病院もあります。ほかの地域から来る人や外国人も多い。こういった特殊な地域なのに、ほかと同じように地域内だけの病床数と人口の需給のバランスで評価して果たしてよいものでしょうか」

 日本有数の大病院がひしめくこの地域では、診療実績があったとしても、相対的に低く評価されがちだ。全国一律の基準で評価されることへの不満は、都市部だけでなく過疎地を含め、医療関係者の間で根強い。

 地域医療への貢献が全く考慮されていないことにも疑問を感じるという。地域医療支援病院や救命救急センター、災害拠点病院といった重要な役割をいまも担っている。日本最大の社会福祉法人である恩賜財団済生会の病院として、経済的に苦しい人らへの支援事業も続けてきた。

「診療実績だけを見て、全国一律に判断する考え方そのものがおかしい。自治体が運営し税金も投入されている公立病院と、税優遇はあっても税金が直接投入されてはいない当院のような公的病院を同じように扱っていることにも、違和感があります」

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職員の内定辞退など実害も出ている