東京都済生会中央病院=東京都港区、撮影・多田敏男
東京都済生会中央病院=東京都港区、撮影・多田敏男
東京都済生会中央病院は救急医療にも力を入れている=撮影・多田敏男
東京都済生会中央病院は救急医療にも力を入れている=撮影・多田敏男
再編の候補となる病院名を初めて公表した厚生労働省=撮影・多田敏男
再編の候補となる病院名を初めて公表した厚生労働省=撮影・多田敏男
忙しい業務をしながら外来診療も担当している高木誠院長=撮影・池田正史
忙しい業務をしながら外来診療も担当している高木誠院長=撮影・池田正史

 厚生労働省が統廃合の議論が必要だとして9月にまとめた公立・公的病院のリストが、大きな波紋を広げている。再編の候補となる全国の424病院が初めて公表されたからだ。

【写真】再編の候補となる病院名を初めて公表した厚生労働省

 診療実績が乏しかったり、別の病院で代替可能だったりするところを公表することで、国としては統廃合を促し医療費を削減しようとしている。その中には、過疎地の医療を支えるところや、歴史ある有名なところも含まれている。

 自治体や病院関係者からは、「納得できない」などと反発する動きがある。ただ、国がやろうとしていることだけに、表だって反論することを控えている病院も多い。

 そんな中、東京の有名病院のトップが声を上げた。救急患者を広く受け入れ、生活が苦しい人への「無料低額診療事業」もしている東京都済生会中央病院(東京都港区)の高木誠院長だ。専門は脳血管障害などの脳神経内科で、院長業務をしながらいまでも外来診療を担当している。

 今回の「424病院再編問題」への院長名の見解を、ホームページで公表している。一部を紹介しよう。

「厚労省は地域医療構想の議論を活性化するためにという理由で、診療実績などの一定の基準により再編、統廃合の対象として公立・公的病院424病院の名前を公表し、マスコミにも大々的に取り上げられました。この中に済生会中央病院の名前が入っていたことに当院を知る多くの医療関係者、患者さんやそのご家族は驚き、当院で働いている職員にも大きな衝撃を与えました。当院はこの地で100年以上にわたり地域の医療・福祉の向上を目的に事業を行ってきました。職員の多くは、地域の医療、福祉を支えることが当院の使命であると考えており、地域から信頼され頼りにされる中核病院であるとの自負を持って日夜業務に励んでいます。そのような当院がある日突然、厚労省から再編、統廃合の対象として指定されたことの不条理に憤りを感じます」

 このように強く反論した上で、再編、統廃合の可能性を明確に否定した。

「当院は地域医療構想の議論の活性化自体には反対しません。しかし、患者さんや職員の不安を大きくし動揺させるような、また風評被害の原因ともなる突然の病院名の公表という厚労省の今回のやり方には断固抗議します。また、信頼性に乏しい診療実績のデータだけをもとにして、その病院の地域での貢献度や存在意義をまったく無視した一方的な選定方法にも納得できません。今後も高度急性期機能、急性期機能を中心とした地域医療支援病院、救命救急センター、災害拠点病院として、この地域の中核病院の役割を果たしていきます。したがって、現在のところ、再編、統廃合の計画はまったくありませんので、患者さんもこれまで通り安心して受診していただければ幸いです」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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高木院長は「風評被害を招きかねない発表の仕方」だと指摘