鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
「え~と、顔は浮かんでいるんだけど……」  (c)朝日新聞社
「え~と、顔は浮かんでいるんだけど……」  (c)朝日新聞社

 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「物忘れの気まずさを解消するルール」について。

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 今日は大人の社会で役立つであろうルールを提案したい。45歳過ぎて、物忘れがひどくなってきたことは以前書いた。人と話していて、映像は頭にあるのに名前が出てこない。

 僕はなぜか首都高速道路の出入り口の「飯倉」(東京都港区)が出てこないことが多くあった。人名もよくある。突然「ジョニー・デップ」が出てこなくなったことがあった。そのときは「あの人、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の」と言うと、「あ、ジョニー・デップ?」と一緒にいた人がアシストしてくれた。

「ブラッド・ピット」が出てこなくなったときもあった。そのときは、連鎖して映画名も出てこなくなった。「ファイト・クラブ」と言いたかったのだが、それも出てこない。映像は浮かんでいるのに「ほら、あの二重人格の映画に出てた人」と言っても、周りは正解にたどりつけず。今度は映画「セブン」も出なくなってしまい、「ほら、奥さんが最後に殺されちゃう、バッドな映画に出てる人」と言うと、隣の人が「もしかしてセブン?」と奇跡の正解を出し「もしかしてブラッド・ピット?」とさらなる正解。正解が出たはいいが、結局、何を話したかったのか忘れてしまったりして。

 で、この物忘れ。50歳を過ぎるともっと多いようだ。50代以上には偉い人が多い。この「立場の偉い人」と話しているときに、その偉い人が物忘れで、言いたい名前が出ないとき、めちゃくちゃ気まずくなる。「ほら、あの人。なんだっけ」と言われると、それが友達同士のときにはない緊張感が漂う。偉い人に恥をかかせる時間を短くさせてあげたいと周りは思い、なんとか正解を当てようとするが、ヒントすら出せないと、周りは超困っていく。

 先日、テレビ局の「偉い人」と会食しているときにそれは起きた。映画「ジョーカー」の話をしていて、その流れから、偉い人は「ジャック・ニコルソン」の名前を言いたかったんだろう。だけど、「ほら、あの人。なんだっけ」と言うがわからない。ヒントも出せない。偉い人は「ほら、あの人」と言うが、このときの「ほら」が緊張感を増す。超難しいクイズ大会。結局30秒ほど粘って正解は出てきた。

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鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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