坂詰氏が高齢者にすすめる運動は、寝たきりや介護を防ぐためのスクワットだ。

「全身の筋肉量の6~7割は下半身に集中しています。筋肉量の少ない腹筋よりも、下半身を優先的に鍛えるのが効率的です。1セット10回を3セット、週1、2回するだけでいいんです。しっかりしゃがめなければ浅くしゃがみ、10回やって少しつらいと感じる、8割くらいの負荷をかけるように調節しましょう。伸ばす時よりもしゃがむ動作のほうが重要なので、ゆっくり息を吐きながら2~5秒かけてぎゅ~っと下ろしていってください」

 毎日やらないことも肝心。

「筋肉が十分に回復するのに48~72時間かかるとされています。回復していない状態で負荷をかけると、効果を得られないだけでなく、筋肉や腱(けん)の炎症などケガをする可能性もあります。最低でも2~3日は空けてください」

 世間にあふれる健康グッズも慎重に選びたい。はいて寝ると足のむくみがとれるという市販の着圧ソックスはその一つだ。日本静脈学会理事長で慶友会つくば血管センター長の岩井武尚氏は、効果を疑問視する。

「2本足で立っている日中は、足に行った血液は重力に逆らって心臓まで上がってこなければならないので、血流が滞ってしまうことはありますし、足がむくむこともあるでしょう。しかし、寝ている間、体は水平状態で血流も良くなりますから、必要ないのです」

 締め付けが強すぎるものもあるので、気をつけたほうがいい。

「過去に、スポーツ用のハイソックスをはいて足が壊死(えし)してしまった症例があります。締め付けすぎて、足の動脈と静脈の流れが止まってしまったのです」

(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2019年10月11日号