自民党の石井浩郎議員(C)朝日新聞社
自民党の石井浩郎議員(C)朝日新聞社

 デリバティブ(金融派生商品)取引で、自民党の石井浩郎参院議員(55)から預かるべき証拠金の不足を不正に立て替える便宜を図ったとして、関東財務局が、JPアセット証券(東京都中央区)に対し金融商品取引法違反で業務改善命令を出した。コンプライアンスが厳しいこのご時世、この会社はなぜこんなことをしたのか。

「これしたら問題になるのは、証券会社の社員なら誰でも分かっているはず」

 金融業界で働く男性はこう話す。

 発端は、証券取引等監視委員会が8月30日付で、金融商品取引法が禁じる「特別な利益の提供」に当たるとして、同社に行政処分を出すよう金融庁に勧告した。

 監視委などによると、同社は昨年10月~今年5月、141営業日のうち111営業日で石井議員の証拠金が約40万~6200万円分足りなかったのに、不足分を立て替えた上で新規の取引も受けたという。

 石井議員は、石井事務所は「認識が甘く勉強不足だった」などと答えているようだが、勉強不足などという言い訳で済ませる問題ではなさそうだ。

 経済アナリストの森永卓郎さんはこう解説する。

「普通の人の場合は、一定の損失が発生した際に、これ以上損失が拡大しないように、ロスカットといって取引を強制的にストップさせられる。しかし、証拠金を立て替えてもらうことで、相場が戻った時に損失をなくすことができる。証拠金の免除を受けると、ずっと取引が続けられるので、確実に勝てるという状況になる」

 10日にあった関東財務局の発表では、「経営陣の法令順守意識が欠如していた」と指摘し、適切な経営管理体制の構築や、経営責任の明確化を求めている。

 会社への厳しい改善命令も必要だが、石井議員個人の責任はないのか。

「犯罪として立証するのは難しいとは言われているが、かなり悪質。約6000万円というのは、10億円単位のとてつもない額の取引をしていた疑いが強い。立て替えてもらったおかげで、本来全損になるはずだったのが、いくら利益を出したのか。国会議員なら説明する責任がある」(森永氏)

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会社側の利点は