経済評論家の平野和之さんはこう指摘する。

「郊外にあるショッピングセンターがなくなっていくのは時間の問題。地方は車社会なので様々な商業施設が郊外にできたが、人口減少に加え、高齢化で運転ができなくなる人も増える。そうなれば集客できず、撤退は不可避といえます」

 そうなると、マクドナルドやモスバーガーといったおなじみのチェーン店の動向も気になる。

 国交省のまとめでは、ハンバーガー店の立地する確率が50%となる人口規模は、3大都市圏を除く自治体で3万2500人(3大都市圏を含めると2万7500人)がボーダーラインとなっている【表1】。

 人手不足などで苦境に立たされているチェーン店も出始めている。今年1月、「サブウェイ」のフランチャイズ店などを運営するエージー・コーポレーションが倒産。5月にはバーガーキングの大量閉店も明らかになり、利用者から驚きの声が上がった。

 前出の平野さんはこう見る。

「人口減少によって、お客さんと働き手の両面で人がいなくなり、外食産業は、右肩下がりになっていく。今後はコスト削減で、AI、ロボットなど機械化、IT化によるさらなる省力化が進むが、体力勝負である限り、抜本的な解決策にはならず、一層、淘汰が進むことが懸念されます」

 全国展開しているあのスターバックスですら、撤退を余儀なくされる可能性があるのだ。

 仙台市宮城野区、横浜市金沢区、同市港南区、神戸市北区、北九州市小倉北区といった政令指定都市の名前も挙がっており、東京都では、多摩地区の中核都市、立川市も当てはまる【表8】。

【表8】スターバックス
都道府県 市区町村       総人口
              2015年/2040年
青森県  弘前市     177,411/131,389
宮城県  仙台市宮城野区 194,825/170,251
茨城県  日立市     185,054/129,193
埼玉県  谷市     198,742/159,597
東京都  立川市     176,295/172,902
神奈川県 横浜市金沢区  202,229/154,084
     横浜市港南区  215,736/170,305
     小田原市    194,086/155,368
新潟県  上越市     196,987/153,020
山梨県  甲府市     193,125/154,956
静岡県  沼津市     195,633/145,086
愛知県  豊川市     182,436/167,953
三重県  鈴鹿市     196,403/164,586
京都府  宇治市     184,678/139,547
大阪府  和泉市     186,109/171,767
兵庫県  神戸市北区   219,805/167,156
鳥取県  鳥取市     193,717/164,941
広島県  呉市      228,552/161,648
福岡県 北九州市小倉北区 181,878/164,955

 店舗の撤退について「スターバックス コーヒー ジャパン」広報部に尋ねると、「出退店に関しては様々な理由をもとに戦略的に行っております。本件に関しては公表できることはございません」との回答だった。(本誌・吉崎洋夫、田中将介)

※表2~8は、2015年時点では表1の人口規模を上回っているが、40年の時点で割り込む主な自治体をまとめた。各サービス施設が消滅する可能性が高まっていることを表す。

週刊朝日  2019年8月9日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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