会社を辞める宣言がトーンダウンした加藤浩次 (c)朝日新聞社
会社を辞める宣言がトーンダウンした加藤浩次 (c)朝日新聞社
グダグダ会見でも辞めない方針の吉本興業の岡本昭彦社長=撮影・多田敏男
グダグダ会見でも辞めない方針の吉本興業の岡本昭彦社長=撮影・多田敏男
吉本から「契約解消の撤回の撤回」をちらつかせられた宮迫博之=撮影・今村拓馬
吉本から「契約解消の撤回の撤回」をちらつかせられた宮迫博之=撮影・今村拓馬

 反社会的勢力との“闇営業”問題を巡って崩壊の危機にさらされている吉本興業。岡本昭彦社長の謝罪会見はグダグダでかえって信頼を失った。お笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次ら芸人からも、経営トップの退陣を求める動きがあったが、吉本は経営体制を維持する方針だ。世論の批判をものともせず“強硬路線”を選んだことで、“加藤の乱”は鎮圧されたようだ。

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「僕もああいう発言をして、いろんな方としゃべらせていただいて、これからいろいろ決まっていくのかな。僕もいま冷静に、あのときは熱くなった部分もあるから。まだまだ全然時間かかりますよ。ああやって言ったことは僕の責任で悪いところもあるが、そういう気持ちですから。どういう風に和解という形になるのかわかりませんけど、時間をかけて話をしようと思っています」

 宮崎サンシャインFM「極楽とんぼ山本圭壱のいよいよですよ」に、7月26日夜出演した加藤。相方の山本の「どうなってんの吉本さんと」という突っ込みにこう答えた。

 加藤は自らがMCの日本テレビ系の情報番組「スッキリ」で、22日午前、岡本社長の会見に先立って、「このままの体制が続くならこの会社を辞める」と言い切った。

 山本はこの辞める発言を事前に知らされておらず、番組を見てびっくりしたという。加藤も番組終了後に知らせていなかったことに気づき、すぐにメールしたという。

 その文面を山本はラジオでこう明かした。

「俺、吉本辞めるかもしれん。申し訳ない」

 テレビの生放送で自らのクビをかけ、経営トップに退陣を迫るという威勢のいい主張をした加藤。22日午後の岡本社長のグダグダ会見もあって、視聴者らの支持を集めた。

 加藤の主張や岡本社長の会見を受けて、複数の芸人が会社への批判をツイッターなどに投稿。平成ノブシコブシの吉村崇はツイッターで7月22日に、「僕は北海道の人間です 何かあった時は北海道の人について行きます」と、北海道出身の加藤への支持を鮮明にした。

“加藤の乱”は世論の後押しもあって一時は成功するかに見えたが、本人がラジオで語ったように大きくトーンダウン。加藤を支持する芸人の動きも広がらなかった。

 なぜ加藤は敗れたのか。吉本はもともと、岡本社長や大崎洋・吉本興業ホールディングス会長の退陣は想定していなかった。加藤と大崎会長は7月23日に話し合い、会社側として退陣要求を検討するそぶりも見せたが、実際は経営トップの続投方針は固まっていた。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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吉本が強気でいられるわけとは