足立区では高齢者の遺体が長期間経ってから見つかる事件があり、孤独死や高齢者の所在不明問題への対策に力を入れている。区が持っている高齢者についての個人情報を町会や自治会に提供し、地域で見守り活動ができるようにする条例を12年に制定した。今では「孤立ゼロ」を掲げ、70歳以上の一人暮らし世帯などを対象とした実態調査や戸別訪問、ふれあいイベントなどをしている。

「区民一人ひとりが、老後の備えを考えておく必要があります。周りの人の見守りや気配りも重要。何か変わったことがあれば、『おせっかい』と思われてもいいので、医療や介護といった必要な支援につなげてあげてほしい」(足立区の島田裕司・絆づくり担当課長)

 こうした見守り支援や安否確認の窓口整備は、全国に広がっている。これから導入する自治体もあり、一人暮らしでも行政や地域と結びついて孤立しにくくなっている。

 企業も負けてはいない。離れて暮らす高齢の親らの見守りサービスが充実している。自宅に取り付けたカメラやセンサーなどを使って、高齢者の暮らしぶりを確認できる。警備会社や電力・ガス会社のほか、家電メーカーなども参入。調査会社の富士経済によると、見守りサービスの市場規模は18年は75億円で、25年には6割増の124億円に成長すると見込む。

 損害保険会社は、賃貸物件のオーナーや入居者本人向けに、孤独死が起きた場合に部屋の原状回復や遺品の整理などをする商品を販売している。

 行政や企業の取り組みは進んでいる。私たちにできるのは、孤独死に対する考え方を見直すことだ。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2019年8月2日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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