一人暮らしの高齢者は、社会とのつながりが薄くなりがちだ。退職によってそれまで付き合いのあった同僚や知人と疎遠になる。現役時代は仕事が忙しく、近所付き合いなど地域との関係が薄かった人も多い。こうした人たちにとって、孤独死は深刻な問題だ。

 内閣府の調査では、一人暮らしをする60歳以上で孤独死を身近に感じると答えた割合は、「とても感じる」「まあ感じる」を合わせると45.4%に達した。一人暮らしの高齢者の半分近くが不安を感じている。

 こうした状況を知ると、「やっぱり怖い」と思った読者もいるだろう。でも、心配しすぎることはない。国や自治体も対策に乗り出している。

 神奈川県横須賀市は昨年5月、自分が入る墓の所在地などを市に登録できる事業を始めた。収入や資産が少ない市民を対象に、生前のうちに低額で葬儀の契約を結べる「エンディングプラン・サポート事業」もあり、行政が「終活」を積極的に支援している。

 北見万幸・福祉専門官は狙いをこう語る。

「最近は身元が判明しているにもかかわらず、遺体の引き取り手のないケースが増えました。墓があるはずなのに場所がわからず、無縁仏として納骨されることもあります。墓の登録事業を通じて、こうした事態を少しでも減らしたい」

 登録事業では、墓参りをしたい人が市に問い合わせれば、場所を教えてもらえる。開始後約1年で登録者は約150人に上る。

 昨年秋に亡くなった一人暮らしの男性の事例では、埼玉県に住むめいから、「おじと連絡が取れない」と問い合わせが葬儀前にあった。

「緊急連絡先として登録されていた友人3人とも連絡が取れ、葬儀に参列してもらうことができました。登録している墓の所在地や、遺言の保管場所も伝えることができた。登録事業がなければ無縁仏になっていたかもしれません」(北見さん)

 東京都足立区は「老い支度読本」や「エンディングノート」を住民向けに配っている。親族の連絡先や残す財産、希望する葬儀の形式などを書き込むことができる覚書ノート。急に亡くなっても本人の意向がわかり、死後の手続きもスムーズになる。

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