田淵さんは健康に関する本を読みあさったり、いいと言われる診療所を聞きつければ行ったりする中で、心身のバランスを整えることで健康を目指す、演出家の瓜生良介さんが提唱した「快医学」に出合う。

「虚弱体質だと思っていたけど、食生活の乱れ、口呼吸、無駄な体の動かし方、睡眠不足などが原因だったということがわかりました」

 人が生きていく上で欠かせない行為に、【1】息(呼吸)【2】動(身体活動)【3】食(食事)【4】想(気の持ちよう)の4つがあり、そこに生活の場である【5】環(環境)が関わってくる。これら5つの要素のすべてのバランスが取れていれば、心身ともに健康になれるというのが「快医学」の基本的な考え方だ。

「これに加え、宇宙や地球の運行に即して生きることを心がけています。太陽が昇ったら活動を始め、日没後に寝る。これは、若さを保つ秘訣でもあります。お金もかからないですし(笑)」

 田淵さんは朝4時に起床し、仕事や予定がなければ22時に就寝する。ただし、遅くまで起きていても健康に支障がないなら無理に合わせる必要はないという。

「食生活も生活習慣も、すべてを完璧にやろうとしても続かない。100点を目指すのではなく、60、70点でいいと思うと気が楽です」

 食生活について心がけていることは、「おなかが空くまで食べない」ということ。

「動物が狩りをするのは空腹時だけで、満腹の時は獲物が近くにいても狩りはしません。昼だからご飯を食べる、というように人の食生活は習慣化されてしまっていますが、『本当におなかが減っているのか?』と自分に問うと、実はあまりおなかは減っていないものです」

 普段の田淵さんの食生活を伺うと、朝はコーヒーとトマトジュースのみ。両方ともマクロビオティックの考えでは体をゆるめて熱を逃がす陰性の食品で、朝一番にこれらを摂取し、便の排出を促しているという。

 午後に空腹を感じてから、デトックス効果の高い葉野菜や雑穀米、青魚などを食べている。青魚の脂に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)には、血液をサラサラにし、中性脂肪やコレステロール値を下げる効果があるからだ。

「空腹になったら自分が欲しているものを食べるのが理想ですが、じゃあジャンクフードでもいいのか?ということにもなりかねません。インスタント食品や砂糖を多く含むお菓子ばかり食べている人は、今までの自分の感覚が鈍っていますから、はじめは体にとっていい食べ物は何かを勉強する必要があります」

 その目安になるのは便という田淵さん。黄色くて太く、水に浮く便であれば体はいい状態を保っており、一方で黒くて便器にへばりつくような便だと、食事を見直したほうがいいという。

「自分という動物の飼育員になったつもりで便を観察し、食事の軌道修正をしていくといいですよ」

(ライター・吉川明子)

週刊朝日  2019年7月19日号より抜粋