「そのため、代謝されない過剰な脂肪は肝臓にたまりやすくなる。だからお酒好きの人は脂肪肝になりやすいのです。1日の純アルコール摂取量が60g(ビールなら中瓶<500ミリリットル>3本、日本酒なら3合)を超えている人の場合、アルコール性脂肪肝であることがほとんどです。アルコール性脂肪肝も放置すれば当然、炎症、線維化、そして肝硬変や肝がんにつながっていくリスクがあります」

 自分の肝臓の状態が心配な人は、やはり定期的な健康診断を受けることが大切だ。そして一般的な健康診断の結果でチェックすべきなのは、肝臓の解毒作用に関係する酵素・γ-GTPの数値、また肝細胞がどれだけ壊れたかの指針となるALTの数値。

「お酒好きの人でこの数値が悪いと出たならば、健康のためにまずお酒の摂取量は減らすことです。しかしこの数値だけでは脂肪肝かどうかはわかりません。脂肪肝が心配な人は、超音波(エコー)検査を受けることです。超音波検査はほとんどの人間ドックで行われていますので、1年に1回は受けてほしいですね」

 肝臓は病気がわかりにくい臓器。

「肝臓の中には痛みを感じる神経がありませんし、再生力が高い臓器ゆえに病気の進行がゆっくりなのです。でもだからこそ、油断してはいけません。健康診断などでずっとB判定(軽度の異常だが、現在、心配なし)という結果が出ていても、10年、20年かかって肝硬変になることもあります。病気の進行は超音波検査だけではわかりにくいこともありますから、肝臓は普段から意識的にいたわってあげて、軽い異常でも専門医に相談することも大事です」

 これから暑い季節になる。冷えたビール、日本酒、ワイン等を飲む機会も増えがちだが、飲むときの注意点があると浅部医師は言う。

「まず、速いピッチでお酒を飲まないことです。暑いからといって勢いよく飲めば、酔いがまわって『お酒を控えよう』という気持ちがなくなってしまいます。これで飲みすぎの日を繰り返していたのでは、体がもちません」

次のページ