「食事や排泄(はいせつ)などでめいっぱい頑張ってしまうと、それ以上のパワーが出なくなってしまう。理想的なのは、7、8割の力で日常生活を送ることです。甘えられるところは、自助具などを使って甘えてほしい」

 そう話す同センターの作業療法士、堀家京子さんに、「甘えるため」のアドバイスをもらった。

 まずは「暮らしの中でどう動いているか」を知ること。生活動線に無駄や不便がないかを見極めて、それを補うグッズを導入すればよい、ということだ。

「トイレのペーパーホルダーや不安定な棚につかまって伝い歩きをしている人もいます。転倒防止のために、そういう人には手すりが必要です。玄関周りの置き型の手すりは、介護保険でレンタルも可能です」

 動線の中に滑り止めのマットを置くのも良いそうだ。

「浴室に入るときの一歩とか、ベッドから立ち上がるときの一歩とか、踏み出すときに滑って転んでしまうのを防ぐ効果があります」

 シニアのお助けアイデアグッズもいろいろある。

 座ったまま落ちたものが拾えるマジックハンドや、靴下をはくのをサポートするグッズなどは、ぎっくり腰の人にも役立つだろう。

 食べこぼしをキャッチするポケットつき使い捨てエプロンなどは100円ショップでも手に入る。シニアライフデザイン代表の堀内裕子さんは、お助けグッズ隆盛の今を「ラッキーな時代」と言う。

「その分、見る目が問われます。何が不自由なのか、よく観察をして選ぶことです。中には、使ってみなければわからないものもあります」

 補聴器や集音器などの難聴対策グッズは、人によって聞こえ方が違うので特に注意が必要という。

 記者も耳が聞こえづらい父親(85)に、いくつか商品を取り寄せて試してみたが、どれも厳しかった。「イヤホン」への苦手意識もあり、合うものは見つけられなかった。しかし利用している人は多く、病院などできちんと聴くためにも合うものがあれば取り入れたい。

 堀内さんが薦めるのは、骨折予防のためのガードルだ。堀内さんは、生まれつき骨格が弱く、ちょっとした転倒で骨折をしていた。自身の体験からも薦める。
万が一転んでも、体を守る下着をはいていれば衝撃による体へのダメージは和らぐ。気持ちも安心だ。

「大型スーパーやデパートには福祉用具専門相談員がいる介護ショップがあります。地域包括支援センターや、デイサービス施設に行って相談するのもいいと思います」(堀内さん)

 できなくなったことに目を向けて嘆くのではなく、最後までできることを大切にして、ちょっと「ラク(楽)」をする。そんな暮らしで、楽しいシニアライフを送りましょう!(本誌・大崎百紀)

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