喋らないゴリラ、言葉を持った人間の悲哀 小川洋子のゴリラ論 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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喋らないゴリラ、言葉を持った人間の悲哀 小川洋子のゴリラ論

連載「RADIO PA PA」

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延江浩週刊朝日#延江浩
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFMエグゼクティブ・プランナー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFMエグゼクティブ・プランナー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

京都市動物園を訪れた小川洋子さん(筆者提供)

京都市動物園を訪れた小川洋子さん(筆者提供)

 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は「作家の小川洋子さんがゴリラに近づきたい理由は?」。

【写真】京都市動物園を訪れた小川洋子さん

*  *  *
「動物園は野生への窓口です。言葉の届かない場所にいってらっしゃい」

 京大総長で40年間アフリカに通い続けているゴリラ研究の第一人者、山極寿一さんの計(はか)らいで、大好きな作家、小川洋子さんと京都市動物園に行った。小川さんは、TFMで「未来に残したい文学遺産」として文学作品を毎週一遍ずつ取り上げ、音楽とともに紹介している(「メロディアス ライブラリー」毎週日曜午前10時)。

 上野動物園に次いで2番目に古い京都市動物園は、公園のように小ぶりで動物を間近に見ることができる。そこに、お父さんのモモタロウ(体重180キロ!)、お母さんのゲンキ、お兄ちゃんのゲンタロウ、そして昨年12月に生まれたばかりのキンタロウの、ゴリラの4人家族がすんでいる。

『ゴリラの森、言葉の海』という対談集を山極さんと出したばかりの小川さんは、「言葉の届かない場所へゴリラを案内人にして近づきたい」と、ゴリラについて調べ上げた色とりどりのメモを書いた大学ノートを抱えていた。

「私が毎日小説を書いているのは、言葉の届かない世界、言葉のなかった懐かしい場所へ行きたいから」

 話しかけても父のモモタロウは背を向け無言のままだった。こっちを向いたと思ってもすぐ反(そ)らされる。

 雄が黙って背中を見せるのは、家族を背負った彼が僕ら人間との間合いを測っているためだという。いかに家族を思いやり、守れるか。喧嘩になってもどこかで第三者の仲裁を待つ。「まあまあ、平和に行こうよ」

 彼らは互いのプライドを保ち、無用ないざこざを避けるため、細やかな気遣いを持っている。

「ゴリラは人間と違って、思いついたことをそのままペラペラ喋らないんですね。考えて、考えて、でも動かない」。小川さんがこちらを振り向いた。


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