遺品整理は、面倒くさがる人が非常に多い。

「なんといっても家一軒分のモノがありますからね。でも遺品整理は何も仕分けから処分まで、全部自分で行うことはないんです」

 ポイントはまず「いるもの・捨てたくないものだけを選ぶこと」だ。「『いるもの』『捨てたくないもの』『主にいらないけれど、捨てたくないもの』を、相続した家から運び出してみてください。そしてそれ以外のモノは業者さんに持っていってもらうというやり方もありますよ」

 そして「いるもの」は自分の家に置いておく。だがそれだけでも結構な量になるはずだ。だから「捨てたくないけど、まあどうかなあ」と迷うレベルのものに関しては貸しコンテナを1年だけ契約し、そこに保管する。そして1年後にもう一回見てそのときにいらなかったら捨てるようにする。

「遺品整理の仕方にも合う、合わないがありますから、自分に一番合う方法でやられるのがいいと思いますが、何もしないで空き家に置きっぱなしにしておいて、全部がホコリだらけになる、あるいは雨漏りなどで全部使えなくなる……などといったことになるともったいないです。また置きっぱなしにしているうちに盗られてしまうこともありますので、遺品整理は空き家対策の基本です」

 空き家の活用をすぐに始めなくても、所有するのであれば「管理されている物件である」ということを周囲にわからせることも肝心だ。「私たちのような管理会社が入った場合は、管理会社の看板を空き家に設置します。ここは○○が定期巡回している空き家です、と看板を設置するだけでも、犯罪の抑止につながります。また所有する空き家の近隣住民の人たちとのコミュニケーションも大切にして問題が起こらないようにするのがベストです」

 自分が住んでいる場所、そして自分が空き家を所有している場所。結局そのどちらの地域の治安も守っていくには、“すぐ先の未来”を予測して先手を打っていくことが重要なのだ。いつの時代も、問題の先送りと見て見ぬフリは不幸を呼ぶ。

 そのことを、心にとめておかねばなるまい。

週刊朝日  2019年3月1日号より抜粋